ファッション

「ルイ・ヴィトン」2015-16年秋冬パリ ニコラ・ジェスキエール、LVウーマンを探検に連れてゆく

 「就任から1年。いや、まだ1年だよ」。ショーの後のバックステージでニコラ・ジェスキエールはそうコメントした。“いよいよあなたの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」スタイルが確立された感がある”というこちらからの問いかけに対する答えだ。「僕はまだ女性のためのワードローブを作り上げるようと探求を続けている。女性ためのワードローブには何が欠けているのか、そこに自分らしさを融合するにはどうしたらよいのか。言わば探検だよ」。

 今季の説明をするニコラが繰り返し使った言葉がこの「explore」。直訳すると「探検」だ。「『ルイ・ヴィトン』は“トラベル”のブランドというよりも“探検”のブランドなんだ」と語る。そう言えば、先シーズンもニコラは「トラベル」ではなく「ジャーニー」という言葉を使い、冒険旅行のニュアンスを含めた。単なる旅行ではなく未知に踏み入り切り開く、それがニコラの旅の姿勢であり「ルイ・ヴィトン」像なのだ。

 ショー会場は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの隣に建てたシルバー色の大小3つのドーム。天井を見上げると青空が見えるのは、このドームが天体観測所をイメージしているからだ。会場内にはランウェイが曲がって続き、席にたどり着くまでの気分がすでに探検である。数カ所にモニターを並べた塔が建ち、画面をのぞくとレーダーで客席やモデルをとらえる風の作りになっている。ニコラが男の子の表情で画面を覗き込む姿が目に浮かぶようだ。

 ファーストルックはモコモコの白いアルゼンチン・シープスキンのコート。手には氷で作ったようなボックス型のバッグを手にしている。探検先は南極なのかもしれない。

 ポイントは、キー素材であるレザー使いや、レースに見えるフェミニニティ、ジッパーなどのディテールで取り入れるスポーツの要素など。これらをミックスし、今季はさらにヴィクトリアン調の要素も加えている。コルセット風のトップやボリューミーな肩のラインなどに加え、あえて切りっぱなしにすることで裾をクルクルと丸めてフレア型にしたリブニットのディテールもビクトリアン・スタイルからきている。

 胸元にカットを入れたリブニットのセットアップや、部分的に黒いレザーで切り替えたダッチェスサテンとレースのトップスなどは女性宇宙飛行士のユニフォームを彷彿とさせる。シルクサテンのジャケットも薄く中綿を入れた上にボタンなどのディテールをすべて隠し宇宙服の様相だ。シルクジャカードのドレスやミニスカートの柄はオリエンタル調だが、よく見るとクラゲかはたまた火星人か、という不思議な生き物の柄が織り込まれている。

 服の中にはニコラからの隠れメッセージがいくつも見つかる。レースの柄の中に隠した小さなモノグラムやパンツのウエストに入れた「V」のカットなど。ジャケットのボタンはキー素材であるレザーで包んでいる。そんなマニアックなメッセージもニコラらしい。

 ベルナール・アルノー=LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン社長兼CEOはフィナーレに姿を見せたニコラに向けてOKサインを出していた。ニコラのアイデンティティーであるフューチャリスティックな世界観と「ルイ・ヴィトン」の“ジャーニー”の精神の相性の良さは確実のようだ。

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