タペストリー(TAPESTRY)は8月10日、カプリ・ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収に関する最終契約に合意したと発表した。買収額は85億ドル(約1兆2325億円)で、取引は規制当局の承認などを経て2024年に完了する予定だ。これにより、前者の擁する「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」と後者の「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」が統合され、年間売上高120億ドル(約1兆7400億円)を超える巨大ファッション企業が誕生する。ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)=タペストリー最高経営責任者(CEO)へのインタビューやアナリストの見解から、買収がもたらす機会と課題を読み解く。(この記事は「WWDJAPAN」2023年8月21日号からの抜粋です)
タペストリーとカプリを合わせた年間売上高120億ドルというのは、前年度の業績で見ると、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「シュプリーム(SUPREME)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION)の116億ドル(約1兆6820億円)や、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」や「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」が主力のPVHコープの90億ドル(約1兆3050億円)、ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)の64億ドル(約9280億円)を上回る。また、両社を合わせた過去1年間の調整後営業利益は約20億ドル(約2900億円)に上り、今後は75カ国以上で事業を展開することになる。
タペストリーは買収により、顧客セグメント、国や地域(特にアジアとヨーロッパ)、製品カテゴリー(特にウエアとシューズ)においてポートフォリオのリーチを拡大して国際的な競争力を高めるほか、取引成立後3年以内に2億ドル(約290億円)以上のコスト削減を見込む。また、ポートフォリオが広がることで、より強力なブランドがその他のブランドをカバーでき、企業としての安定性向上にもつながる。一方、各ブランドの課題にも対応することになり、特に23年4〜6月期(24年第1四半期)の売上高が前年同期比13.8%減となった「マイケル・コース」の改革に取り組む必要がある。
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