巨大なモニターには、北海道・美深町の穏やかな牧場風景。美深を良く知る写真家の岡田敦の作品が会場をぬくもりで包む。前半は、小説にも登場する1970年代の学生運動を重ね、ダメージ加工を施したデニムとウールボアを柱にビンテージライクに構成する。デニムは元々得意とする素材だが、ショーでここまでフォーカスするのは珍しい。日本の職人技術を生かし、ブリーチアウトやスクラッチのダメージ加工でヴィンテージのように仕上げる。デニム以外の素材の多くがウールで、フランネルのように本来のウールの素材感を生かしたものから、ジャージーまで、ぱっと見では分からない幅広い使い方をしている。
ワーク、スポーツ、ミリタリー、テーラードなど複数の要素をミックスしたレイヤードは得意とするところだが、今季はそのシルエットに変化が見られる。クロップドのワイドパンツにオーバーサイズのアウターなど、ビッグシルエット同士を重ねるコーディネートがそれだ。一見ではわからないが、これらのわずかにゆるいフォームは着物や袴からヒントを得たといい、ここにも「ファクトタム」流の日本を見る。