エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)の2023年6月期通期決算は売上高が前年同期比10.4%減の159億1000万ドル(約2兆3069億円)、営業利益が同52.4%減の15億900万ドル(約2188億円)、純利益が同58%減の10億600万ドル(約1458億円)の減収減益だった。コロナの影響で事業環境が引き続き混乱した。特に、アジアのトラベルリテールの巻き返しに苦戦したことが響いた。また、世界的なドル高、インフレ、景気後退懸念もビジネスを圧迫し通期売上高は減少した。
カテゴリー別では、スキンケアの売上高は同17.1%減の82億200万ドル(約1兆1892億円)、メイクアップが同3.3%減の45億1600万ドル(約6548億円)、フレグランスが同1.5%増の25億1200万ドル(約3642億円)、ヘアケアが同3.4%増の6億5300万ドル(約946億円)だった。スキンケアの大幅減は「エスティ ローダー」「ラ・メール(LA MER)」「ドクタージャルト(DR. JART +)」のアジアにおけるトラベルリテールの低迷を主因とする。「ジ オーディナリー(THE ORDINARY)」の新商品や、「M・A・C」の新スキンケアライン“ハイパー リアル”の成功がスキンケア事業の減少を一部相殺した。
メイクアップは「エスティ ローダー」「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「ラ・メール」の減収を、「M・A・C」「クリニーク(CLINIQUE)」の増収が一部相殺した。フレグランスは「エスティ ローダー」「ル ラボ(LE LABO)」「トム フォードビューティ」「クリニーク」「キリアン(KILIAN)」がほぼ横ばいだったが、22年6月に「アラミス(ALAMIS)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」などを擁するアラミス・デザイナーフレグランス部門を終了したことなどにより相殺された。ヘアケアは「ジ オーディナリー」がけん引し成長した。
地域別では、北米の売上高は同2.3%減の45億1800万ドル(約6551億円)、欧州・中東・アフリカが同19%減の62億2500万ドル(約9026億円)、アジア太平洋地域が同4.5%減の51億9400万ドル(約7531億円)だった。米国はインフレ圧力と景気後退懸念、小売店の回復ペースの遅れ、一部の小売店における在庫引き締めの悪影響を受けたほか、デザイナーフレグランスの終了を反映し減少した。北米の減少を一部相殺したのが、ブラジルとメキシコを中心とする中南米の成長で、メイクアップの伸長がこれをけん引した。
アジア・太平洋地域は、中国本土でコロナウイルス感染者の増加やそれに関連する規制により上半期の売り上げが不振だった。また、トラベルリテールの要所である海南島における長期にわたる店舗閉鎖が逆風となり、旅行再開後も低迷した。一部小売り業者による在庫引き締めも追い討ちをかけた。韓国もコロナ禍の規制によりトラベルリテールが減速。加えて、国際線の運航再開やビザの発給、団体ツアーの催行が予想以上に遅れたことも、アジアにおけるトラベルリテールの回復をさらに困難にした。香港特別行政区とマカオ特別行政区、東南アジアの売上高増加が一部を相殺した。
ファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者(CEO)は声明で、「アジアのトラベルリテールでは、第4四半期にかけて海南島での圧力が強まった。5〜6月、小売業の売上動向は悪化し、“代購”と呼ばれるソーシャルバイヤーの活動を規制する強制措置を受けて急激にマイナスに転じた。これらは持続可能で長期的な成長にとっては好ましいが、移行期を通して短期的には大きな逆風となることは間違いない。2023年度通期決算では、多くの先進国市場と新興国市場で既存事業の売り上げ成長とプレステージビューティのシェア拡大を達成したが、アジアのトラベルリテールが特にスキンケアで業績を圧迫し、北米では低調な展開が続いた。フレグランスは全ての地域で2ケタ増と好調で、メイクアップは第4四半期に2ケタ増改善し、より多くの市場がポストパンデミックの時代に突入した」と述べた。