2024年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が8月28日に開幕しました。9月2日までの6日間に、全50ブランドがコレクションを披露します。ここでは、単独のショーリポートで紹介しきれなかったランウエイショーやプレゼンテーションを厳選し、3人の取材記者が現場からダイジェストでお届けします。
8月31日(木)
11:30「エックスエスエムエル((X)S.M.L)」
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インドネシア発の「エックスエスエムエル((X)S.M.L)」のショーは、ファッションとサステナビリティの両立の重要性を伝えるビデオレターでスタート。映像が終わるとダンサーたちが登場し、会場を華麗に舞います。コレクションは天然素材のコットンやリネンを中心に用いながら、ワンピースやスーツのセットアップなど、軽やかな春夏の装い。日本の有松絞りのような、トゲトゲのバッグがコーディネートのアクセントです。ショー後には、米国発の植物性代替肉「ビヨンドミート(BEYOND MEAT)」を使ったビーガンバーガーが配られました。えんどう豆たん白を使っているそうですが、しっかりビーフの味がします。ランウエイショーだけでなく、ダンスにハンバーガーと、コンテンツがてんこ盛りのショーで楽しみました。(大杉)
13:00「ハイドサイン(HIDESIGN)」
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「ハイドサイン(HIDESIGN)」は、ユニセックスなワークウエアを制作する会社が立ち上げたブランド。“グレーカラー(GRAY COLLER)”をブランド哲学に掲げ、労働者を表するブルーカラーとホワイトカラーのいずれにも属さず、あらゆる労働環境でも快適に過ごせる機能性を備えたアイテムを制作しています。今シーズンはブランドの取り組みや理念をプレゼンテーション形式で発表。裾を外して、ボディーバッグとして使えるギミックや、身頃のファスナーを開くと用尺が2.5倍になり、ポンチョへと変形するはっ水機能付きのジャケットなどが登場しました。また、高身長、低身長、体重、股下が世界一の4つの体形をデータ化し、それぞれにフィットするユニホームも披露。さらに、“おにぎり専用ポケット”や“裁縫道具専用ポケット”など、特定の用途に向けたポケットを施したジャケットやカーゴパンツもありました。着用することで体温を7度下げることのできる電動ファン付きベストは、備え付けのドローコードによってシルエットを変えることもできます。将来的にはこれらの技術を生かし、ユーザーのライフスタイルに合わせて、サイズや機能をカスタムオーダーできるサービスの提供を目指します。自分もオーダーしてみたいと思いました。(松村)
16:00「セイヴソン(SEIVSON)」
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「セイヴソン(SEIVSON)」は2021年にアメリカ版「ヴォーグ(VOGUE)」による“世界27カ国の新世代のデザイナー”に選出されたヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)=デザイナーが手掛けるウィメンズウエアブランド。女性の魅力と強さを発信しています。今シーズンは“シークレット シークレット シークレット(SECRET SECRET SECRET)”をテーマに、オフィスで働く女性の魅惑的な雰囲気や、秘めやかな妖艶さを表現しました。シュレッダーにかけたような直線的プリーツのブラウスやスカート、再構築したテーラードジャケットにランジェリーを合わせたルックからは、オフィスでは明かされない女性の一面が垣間見えます。ランウエイ中央の巨大な透け感のあるカーテンについては「秘密が見えそうで見えない曖昧さを暗示しました」とシン・デザイナー。(松村)
17:00「シュープ(SHOOP)」
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スペインから東京に拠点を移した「シュープ(SHOOP)」が、3年ぶりに東コレに参加しました。大葉洋平デザイナーとミリアン・サンズ=デザイナーにとっての“東京のイメージ“を反映したコレクションを、国立競技場の地下通路で披露しました。音楽に造詣の深い同ブランドらしい、化学繊維とシルバーの付属を多用したクラブウエアを、東京の街並みに着想したグレー、ブラック、ホワイト、グリーンのカラーパレットでアレンジ。フーディーにプリントした花も東京で撮影したものでしょうか?シリアスなムードも漂うモノクロのグラフィックで、東京で生きる楽しさと厳しさという2つのメッセージを感じました。終盤に登場した、途中で編みを変えたオーバーサイズのニットがかわいかったです。(美濃島)
9月1日(金)
11:30「「ピーエッチ モード トーキョー バイ エムエフエフ(PH MODE x TYO by MFF)」
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「ピーエッチ モード トーキョー バイ エムエフエフ(PH MODE x TYO by MFF)」は、日本の線維商社スタイレムとフィリピンのファッション・ウイーク「マニラ ファッションフェスティバル(Manila Fashion Festival)」との協働プロジェクトです。今季は「アロディア セシリア(ALODIA CECILIA)」「エリス コ(ELLIS CO)」「レナン パクソン(RENAN PACSON)」「ストイック x ユートリーク(S’TOIC x Uttrykk)」の4ブランドが参加し、ショーを行いました。「ストイック」とコラボした「ユートリーク」は、製品染めが得意な日本のウィメンズウエアブランド。シャーリングやドローコードを多用しつつ、特徴的な編み込みのフラップポケット付きシャツやベストを披露しました。会場では来場者にコーヒーが振る舞われ、なごやかなムードでした。(松村)
15:00「アイレンセンス(IRENSENSE)」
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「アイレンセンス(IRENSENSE)」は、2019年「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」のアマチュア部門で優秀賞を獲得したソウ・ゲンイ(TSENG YAN-WEI)=デザイナーが設立したユニセックスウエアブランドで、初のランウエイショーを行いました。映画「アリス・イン・ワンダーランド」が着想源で、恐怖に打ち勝っていくアリスの姿に、初のショーに挑戦するソウ=デザイナー自身を重ねたといいます。ショーでは、アリスを連想させる淡いブルーのワンピースをニットやオーガンジで披露し、トランプ風のクロシェニットが登場しました。ニットは全て編み物が有名な台湾で作っており、一部ハンドメードのアイテムもあるそう。現在は台湾でのみ販売しており、ソウ=デザイナーは「今回のショーをきっかけに日本での卸先が見つかるとうれしい」と目を輝かせました。(松村)
17:00「サポートサーフェス(SUPPORT SURFACE)」
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研壁宣男デザイナーが手掛けるウィメンズウエアブランド「サポートサーフェス(SUPPORT SURFACE)」が大手町三井ホールでコレクションを発表しました。毎シーズン、“無いものを生み出す“をコンセプトにしており、今季は袖周りの生地分量を大きくすることに挑戦しました。ピアノの生演奏と共にショーが始まり、前半はストライプ地のワンピースやブラウスが中心。服としてのバランスを損なうことなくアームホールを大きく設計することで、風通しがよく軽やかな印象に仕上げます。定番のシャギー素材は、洗濯してもフワフワ感が継続できるイタリア産の生地にアップデートし、シャツやベストに使って、エレガントにアレンジしました。また研壁デザイナーは「スカートやパンツの裾幅など、これまで作らなかったヘムライン(衣服の裾部分)の分量感も試みた」と語り、飽くなきチャレンジ精神を感じました。(松村)
9月2日(土)
11:30「「アブランクページ(ABLANKPAGE)」」
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「アブランクページ(ABLANKPAGE)」はタイ・バンコク出身のラロパイブン・プワデト(Larprojpaiboon Phoovadej)=デザイナーが手掛けるユニセックスウエアブランド。3シーズン連続の参加で、今回は駐日タイ王国大使館との共催でインスタレーションを行いました。コレクションは“EXPIRED(賞味期限切れ)“と題し、尾州のテキスタイルメーカー「西川毛織」の規格外品をアップサイクルしたテーラードジャケットやスラックス、「エドウィン(EDWIN)」とコラボしたトレンチコートやタイトワンピースなどが登場。会場中央には大量の食品と段ボールを積み上げ、食料廃棄への疑問を投げかけました。プワデト=デザイナーは「低賃金での長時間労働により、労働者の価値が低下していく社会構造にも“賞味期限“を感じる」とも語り、「そんな社会でも明るい気持ちになってほしい」との希望を込めて、食品のパッケージや「個人的に好き」という“半額シール“をプリントしたポップなアイテムも登場しました。インスタレーション後にはタイの軽食とドリンクが振る舞われました。(松村)
18:00「ウノピゥウノウグァーレトレ ゴルフ(1PIU1UGUALE3 GOLF)」
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東コレ最終日に異色のブランドが登場しました。「ウノピゥウノウグァーレトレ ゴルフ(1PIU1UGUALE3 GOLF)」です。同ブランドは、「ダブルジェイケイ(WJK)」創設メンバーである小澤智弘デザイナーが立ち上げた「ウノピゥウノウグァーレトレ(1PIU1UGUALE3)」のゴルフラインで、表参道ヒルズやギンザ シックスなどに直営店を持ちます。会場には多くの顧客が訪れ、バイヤーやジャーナリストの方が少数。いつものファッションショーと異なる雰囲気が新鮮でした。ウエアはポロシャツやモックネックなどの王道ゴルフウエアから、スエットのセットアップやフリルの付いたブラウスまで用意。大判のペイズリーやロゴのアナグラムなどのキャッチーな柄を、プリントやエンボス加工、角度によって浮かび上がる特殊な加工と、表現豊かにウエアに落とし込みます。キャディーバッグを背負った着こなしや男女のペアルックなど、ゴルフウエアならではの見せ方も面白かったです。(美濃島)
19:00「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」
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今季の東コレのリアルショーラストを飾ったのは、日本を拠点にする中国人デザイナーのヴィヴィアーノ・スーによる「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」。トリに相応しい、ロマンチックな美しいショーを見せてくれました。今季の着想源は仏ミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」(1967年)。カトリーヌ・ドヌーブ(Catherine Deneuve)とドヌーブの実姉フランソワーズ・ドルレアック(Francoise Dorleac)が双子の姉妹役を演じた、名画中の名画です。“美しい夏”をテーマに、セーラーハットとセーラーカラーのドレスを合わせたマリンルックや、海の青を連想させるグラデーションのチュールドレスなどを披露。ブランドが毎シーズン欠かさず提案する花柄は、夏らしいアンスリウムを取り入れて少しエキゾチックな印象も感じさせました。また、クロップドトップからチラ見せするお腹や背中には小さなリボンやラインストーンを乗せ、こだわりを感じさせるディテールにキュン!フィナーレでは、モデルたちが手をつないでスキップして登場します。夏の甘い恋を思い起こさせるようなショーにうっとりし、2024年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京」が閉幕しました。(大杉)