ファッション
連載 東京コレクション

「ア ベイシング エイプ®︎」が30周年ファッションショー 何も変わらないのに新しい

「楽天 ファッション ウィーク東京」の冠スポンサーを務める楽天による、日本発ブランドの支援プロジェクト「バイアール(by R)」の枠組みで、ブランド設立30周年を迎えた「ア ベイシング エイプ®︎(A BATHING APE®︎以下、ベイプ®︎)」がファッションショーを開催した。

「ベイプ®︎」が30周年のファッションショーを開いたのは、実は今回が2回目。7月にはアメリカ・ニューヨークでヒップホップと密接にリンクしたイベントを開き、ゴールドチェーンのモチーフをあしらったダウンやノルディックニット、カレッジモチーフのフリースなどの2023-24年秋冬コレクションを発表している。

“エイプヘッド”に“ベイプ®︎カモ”“ベイプ®︎スタ”
30年前と何一つ変わらないモチーフが続々

一方、24年春夏を発表した東京でのショーは、雅楽のようなBGMでスタート。モデルは左右に提灯をあしらった門にかかる、暖簾(のれん)をくぐってランウエイに現れた。

ヒップホップカルチャーやアメリカとのリンクを示すため、ゴールドチェーンや雄大な大自然などの新しいモチーフを取り入れたニューヨークでのコレクションとは異なり、東京でのファッションショーは“東京らしさ”を意識して「ベイプ®︎」のオリジンに徹した印象だ。登場するのは、誰もが知るモチーフの“エイプヘッド”をカモフラージュ柄に潜ませた“ベイプ®︎カモ”を筆頭に、流れ星の“ベイプ®︎スタ”、フードに描く“シャーク”など、そして“マイロ”など。アイテムも、フーディはもちろん、チェック柄シャツ地で作るCPOジャケットやスカジャン、デニムにカーゴパンツ、そしてハイカットスニーカーと30年前と何一つ変わらない。

なのに驚くべきは、全く古臭く見えないことだ。少し沈静化したとはいえ、「ベイプ®︎」がデビューした90年代はカウンターカルチャーだったストリートがメジャーなカルチャーの1つとなった今、お馴染みのモチーフで作った、お馴染みのアイテムは、古臭いどころか“今っぽい”。パターンは30年前と多少違う印象だが、それでもどのモチーフも、どのアイテムも、そしてどのスタイルも、「懐かしい」のに「新しい」。「ベイプ®︎」が90年代のみならず、90年代から2020年代までずっとファッションのフロントランナーであり続けている証拠だろう。

映画「ザ ファースト スラムダンク」や「バービー」が
着想源!? 「エーエイプ」は「今、この瞬間」捉える

一方、より若い世代に向けて12年に立ち上げた「AAPE BY A BATHING APE®(エーエイプ バイ ア ベイシング エイプ®以下、エーエイプ)」は、30年前から良い意味で変わらない「ベイプ®」とは異なり、「今、この瞬間」のムードを着実に捉えている。メンズは、極端なオーバーサイズシルエットのバスケットボールスタイル。「ベイプ®」とは異なるグラフィックをのせたり、クロシェのようなニットのビッグカーディガンを差し込み、バッシュを履いてバスケットボールを小脇に抱えた。映画「ザ ファースト スラムダンク」が大ヒットして、FIBAバスケットボール・ワールドカップがまさに開かれている今の気分だ。対するウィメンズは、こちらも今まさに上映中の映画「バービー」のようなY2Kスタイル。クロップド丈のトップスにデニムのプリーツミニスカートを合わせ、ハイカットスニーカーやバブルガムピンクのリボンで着飾った。

「ベイプ®」と「エーエイプ」のハイブリッドショーは、30年間かけて築いたレガシーを大切に思う生真面目さと、一方で刹那なほどに今を追求する移り気の双方を表現しているよう。そして、そんな相反する性質が同居するのは、とても日本っぽい。現在は香港の実業家とイギリスの投資会社が経営するが、「ベイプ®」はやはり誇るべき日本のブランドだ。

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