「シュプリーム(SUPREME)」のトレマイン・エモリー(Tremaine Emory)=クリエイティブ・ディレクターが退任した。数日前から憶測が広まっていたが、8月31日に数週間前に退任していたことを自身のインスタグラムアカウントで発表した。同氏によれば、退任は「『シュプリーム』内に構造的な人種差別問題があるため」だという。なお、現時点で後任は発表されていない。
同氏は、投稿内で、黒人アーティストのアーサー・ジャファ(Arthur Jafa)とのコラボレーションが説明なくキャンセルされたことや、デザインスタジオに有色人種のスタッフが10%以下しかいないことなど、「シュプリーム」が主にブラックカルチャーをベースにしているにもかかわらず、社内に構造的な人種差別問題があると説明。また、退任の声明にそうした内容を含めるよう「シュプリーム」上層部に掛け合ったものの、最終的な返答は得られなかったとしている。
これを受けて、「シュプリーム」は同日、本件を報じた英ファッションメディア「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」に対し、「本件で挙げられている懸念について真摯に受け止めつつも、トレマインによる、当社およびアーサー・ジャファとのプロジェクトに関する評価には強く異議を唱える。アーサーとのプロジェクトはキャンセルされていない。当社がクリエイティブ・ディレクターを迎えたのは、創業30年以来初めてのことだった。うまくいかなったことを残念に思っており、トレマインの今後の活躍を願っている」との声明を寄せた。
シュプリームは、1994年にジェームス・ジェビア(James Jebbia)がスケートショップおよびオリジナルブランドとしてニューヨークで創業。世界中に熱狂的なファンがいるストリートブランドとして成長を続け、2017年には巨大投資ファンドのカーライル・グループ(CARLYLE GROUP)に株式の51%を5億ドル(約730億円)で売却した。当時の企業価値は10億ドル(約1460億円)程度と見積もられている。20年11月、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION)が21億ドル(約3066億円)で買収した。
エモリーは、ジョージア州アトランタ出身。10年にロンドンへ移住すると、16年にアサイド(Acyde)と共にクリエイティブ・エージェンシー「ノー バカンシー イン(NO VACANCY INN)」を設立。カニエ・ウェスト(Kanye West)ことイェ(Ye)やヒップホップ・クルーのエイサップ・モブ(A$AP Mob)、フランク・オーシャン(Frank Ocean)、「ステューシー(STUSSY)」などのコンサルティングを務めた。その後、19年に自身のブランド「デニム・ティアーズ(DENIM TEARS)」を立ち上げ、「アグ(UGG)」「リーバイス(LEVI’S)」「アシックス(ASICS)」といった多くのブランドとのコラボレーションを行っている。22年2月、「シュプリーム」のクリエイティブ・ディレクターに就任した。