サステナビリティ

ロンハーマンが独創的なバスツアー ソーラーシェアリングでヒマワリ収穫体験

セレクトショップが顧客向けに行う体験型イベントが数多くあるが、ロンハーマン(RON HERMAN)が8月に実施した顧客ツアーは珍しい内容だった。「ステラ マッカートニー」とのコラボで同ショップが企画したのは、千葉県匝瑳市にあるソーラーシェアリングへのバスツアーだ。ソーラーシェアリングとは発電と農業を同時に行い、太陽光をシェアする取り組みのこと。ツアーでは専門家からその仕組みを学び、不耕起栽培で育った大豆のアイスを味わい、畑のヒマワリ収穫を体験した。

このツアーは、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」とのコラボTシャツの発売を記念し企画された。Tシャツは、環境再生型農業により栽培されたコットンを使用し、「climate optimist」のメッセージと「ロンハーマン」のスローガン「Love for Tomorrow」をハート型の地球で描いている。ツアーには、同Tシャツの購入者などが参加した。

貸し切りバスは、朝8時にロンハーマン千駄ヶ谷店を出発し、約2時間で千葉県匝瑳市に到着。見渡す限り広がる青空と緑。その中に、太陽光パネルと畑が点在している開放感ある土地だ。ここでソーラーシェアリング事業を運営しているのは市民エネルギーちばで、ロンハーマンは同社とみんな電力と協業し2021年に1号機を開設した。ほかには、パタゴニア日本支社などが開設している。米国西海岸とゆかりが深い2社が同タイミングで千葉県の自然豊かな土地で新しい取り組みを始めた点が興味深い。

「ステラ マッカートニー」によるエシカル講座で再生型農業を知る

畑でのツアーは、仮設テントでのレクチャーからスタート。挨拶に立った根岸由香里ロンハーマン事業部長兼ウィメンズ・ディレクターは、「今日もとても暑い。気候変動を日々実感する中で、企業として取り組みたいアクションは多い。ソーラーシェアリングもその一つ。体験を通じて前向きなエネルギーを受け取ってほしい」と、その意義を語った。続いて、ステラ マッカトニー ジャパンによるエシカル講座を開催。コラボTシャツに採用した環境再生型農業についてなど、参加者との対話を通じてフレンドリーにレクチャーを進めた。

続いて場所を畑に移して、市民エネルギーちば宮下朝光・環境事業部本部長がソーラーシェアリングについて解説した。同社は2014年に設立され、千葉県初の35kWの市民共同発電所を開設した。宮下本部長は、以前はここが痩せた耕作放棄地であったこと、今は売電と大豆や麦の有機農業を行いミミズが増えてきたこと、使用する太陽光パネルは遮光率が3分の一程度で作物に太陽光が十分に届くことなどを説明。濃い緑色の大豆の葉が目の前で揺れる姿を見ながら聞くと説得力がある。

不耕起栽培の野菜を使ったビーガンプレートやソイアイスクリームを堪能

ロンハーマンのもう一つのソーラーシェアリングではヒマワリが満開だった。参加者はヒマワリを収穫しながら、農業法人Three little birdsの佐藤真吾代表社員からソーラーシェアリングの下での有機農業とは、について学んだ。収穫しないヒマワリはそのまま緑肥として使用すること、有機農業で土壌を回復させつつ、さらに不耕起栽培に切り替えていくことで大気中からCO2を吸収しカーボンニュートラルへ貢献するということ、収穫しきれないヒマワリも土壌の役に立つことを知ると安心して花束作りを楽しむことができる。

汗をかいた後は近くの集会所でランチを楽しんだ。見た目も美しいビーガンプレートを提供したのは、神奈川県茅ヶ崎のハチイチ農園で、彼らも不耕起栽培で野菜を育てている。夏野菜のグリルや野菜で作ったソースは味が濃く、満足度が高い。デザートのソイアイスクリームは、ロンハーマン匝瑳店で不耕起栽培された大豆を使用していてこれもまた濃厚だった。

レクチャーの締めは、東光弘・市民エネルギーちば代表取締役との対話だ。エネルギッシュな活動で多くの人に影響を与えている東代表はとオープンな語り口でこれまでの活動や展望を語る。痩せた土地の上に新事業を立ち上げるとは、多くの苦労があったに違いないと想像するが、東代表はとにかく未来志向。「楽しい」と話し、「日本の畑の18%がソーラーシェアリングになれば、現時点での日本の消費電力はまかなえる」とその展望を語る。

ロンハーマンは、将来的にこの農地で育った小麦を使ったパンを作って販売したいという。取り組む対象は大地だけに、収穫物や成果を得るには時間がかかるに違いない。東代表取締役は以前「WWDJAPAN」とのインタビュでー、ソーラーシェアリングを始めるには「①お金」「②設備」「③農業」「④物語」の4つの要素が必要。多いのはお金の質問だが、優先度は④から②の順番で、それさえ整えば①は自ずとついてくるというのが私の考え」と話していた。大地を覆う一面の太陽光パネルを見て、圧迫感を覚えることは多い。だが、ソーラーシェアリングにはむしろ牧歌的なムードが漂う。違いはそこに共創の概念があるか否かだろう。ツアーは共創の物語の一端に触れるものだった。

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