マッシュグループは今やファッション&ビューティの両分野で国内のリーディングカンパニーと言えるまでに成長したが、その原動力は「人」にある。企画や店頭で活躍する花形職種から縁の下の力持ちまで、社員22人の仕事を紹介する。本記事で登場するのは、ファッション事業を引っ張るVMD、VD、営業本部長、企画本部長の4人。(この記事は「WWDJAPAN」2023年9月4日号からの抜粋です)
ファッションVMD
石井結子(いしい・ゆいこ)/マッシュスタイルラボ VMD部部長兼VMD1課・4課担当部長 プロフィール
19歳の時、「スナイデル」の顧客からアルバイト販売員に。ルミネ池袋店、ルミネ新宿店の店長を経て25歳でVMD部に異動。ポップアップ含む店舗全体の空間やディスプレーを設計、年4回のシーズン立ち上げ時やシーズンイベント、コラボ企画、毎週の新作展開など、店舗での打ち出しも考える PHOTO:MASASHI URA
ブランドの世界観を“五感”で伝える設計師
商品や什器の陳列を考え、ブランドの世界観を店舗空間などで表現するのがビジュアルマーチャンダイザー(VMD)の仕事。商品や什器をどう並べるかが、店舗の売り上げを左右することもある。そんな重要なポジションのリーダーとしてチームを引っ張るのが石井結子VMD部部長だ。人気ブランドを数多く抱えるマッシュは、新規出店や改装案件も多い。主な仕事は、MDの年間計画に基づいたスケジュールに沿って店舗でのディスプレーを考えること。百貨店や大型モールなど、出店する施設が違えば客層やニーズも異なる。いかにブランドの世界観やメッセージを最適な形で届けられるかを日々思考する。
マッシュのVMDの仕事は、ビジュアル(視覚)に訴えかけるだけにとどまらない。「どうやってお客さまの“五感”にアプローチできるかまで突き詰めて考える」と石井さんは言う。聴覚に訴える店内BGM、嗅覚に訴える店内フレグランスまで、ブランドの世界観をイメージしながらすみずみまで設計する。
VMDは生き物。施設の客層や流入の変化、顧客の視点や気分の変化を敏感に察知し、流動的に対応することも必要になる。例えば館の改装は、客の流れが大幅に変わるタイミング。「お客さまの動線を意識して、目立つようにマネキンの配置やディスプレーを変える。特に視線を集める場所を見極め、強化品番を置くことも大事」という。「毎日店頭に立つスタッフはどうしても視野が狭くなってしまうこともある。私たちVMDが店舗を俯瞰し、テコ入れできることもたくさんある」。
とはいえ、一つ一つの店舗に細かく目を配っていては、体がいくつあっても足りない。店舗空間は、「現場の運営スタッフとの二人三脚で作り上げていくもの」だと石井さんは言う。VMDが作ったベースを、店長をはじめとした現場スタッフが客の反応や商品の売れ行きに合わせて、それぞれの店舗らしくアレンジしていってほしい。そのような思いで、現場にVMDのノウハウを教えている。定期的に店長を集め、スタッフのヘアメイクやコーディネートを指南するビジュアル会やVMD会を実施したり、毎週店頭に並ぶ新作のディスプレーの指示書を全店に展開したりもする。
もともと「スナイデル(SNIDEL)」の顧客から販売員になり、主力2店の店長を経てVMDに異動した。クリエイティブについては、店舗設計のデザインに自ら携わる近藤広幸社長に「ビジバシ鍛えられた」。部長になった今もVMDの“答え”にはたどり着かない。「自分のセンスだけに頼るのはVMDじゃない。どんな気持ちで商品を作り、お客さまにどう伝えたいのか。企画やMD、PRなどいろんな人の思いをしっかり理解して表現できるVMDになりたいし、育てていきたい」。
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