「アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)」は、デザイナーのジョン・バルベイトス(John Varvatos)をチーフ・デザイン・オフィサー(CDO)に任命した。9月11日付で就任し、デザインスタジオを統括するほか、アパレル、フットウエア、アクセサリーなど全カテゴリーのデザインを監修する。同氏が携わった商品は、2024年の夏から秋にかけて順次発売する予定。なお、同氏はコレクションの機能的な部分にはあまり関与せず、それはこれまで通りテクニカルチームが担当するという。
バルベイトス新CDOは、米ミシガン州デトロイト生まれ。1984年に「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」に加わった後、90年にメンズウエア・デザイン・ヘッドとして「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」に入社。同ブランドのシグネチャーの1つとなった、ボクサーパンツとブリーフの中間であるメンズ用のアンダーウエア、ボクサーブリーフを発表した。95年にメンズウエア・デザイン・ヘッドとして「ポロ ラルフ ローレン」に戻り、「ラルフ ローレン ブラック レーベル(RALPH LAUREN BLACK LABEL)」や「ポロ ジーンズ カンパニー(POLO JEANS CO.)」などのデザインも手掛けた。2000年に自身の名を冠したブランド「ジョン バルベイトス」を設立。ロックなど音楽にインスピレーションを受けたモダンなテーラードスタイルやカジュアルウエアで人気を博したが、15年ごろから失速。20年には、業績不振にコロナ禍の影響が追い打ちとなって多額の負債を抱えたことから、日本の民事再生法に相当する米国連邦破産法第11条の適用を申請した。現在は、同ブランドの長年のパートナーである投資会社ライオン・キャピタル(LION CAPITAL)の関連会社がオーナーとなっている。21年には、新ブランド「オン ジス デー(ON THIS DAY)」を設立したものの、23年3月に終了した。なお、バルベイトス新CDOは今年の春からコンサルタントとして「アンダーアーマー」に加わっているが、これは22年12月に同ブランドのケビン・プランク(Kevin Plank)創業者と会食し、意気投合したことによるものだという。
アンダーアーマーは1996年の設立。「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」に次ぐスポーツブランドとして急成長したものの、2016年ごろから成長が鈍化し、17年に赤字転落。20年1月には、設立以来、会長兼最高経営責任者(CEO)を務めてきたプランク創業者がCEO職を退任し、エグゼクティブチェアマン兼ブランドチーフに就任。後任として、パトリック・フリスク(Patrik Frisk)社長兼最高執行責任者(当時)が社長兼CEOに昇格した。同氏は人員削減、卸先の整理、調達先の変更、スポーツウエアとフットウエアへの集中などを含む5カ年の再建計画を実施し、同社は21年12月通期に黒字転換。再建計画の終了に伴い、22年6月に退任した。23年2月には、後任として大手ホテルチェーン米マリオット・インターナショナル(MARRIOTT INTERNATIONAL)のステファニー・リナーツ(Stephanie Linnartz)社長(当時)が社長兼CEOに就任した。
なお、アンダーアーマーの23年4〜6月期(第1四半期)決算は、売上高が前年同期比2.4%減の13億1700万ドル(約1922億円)、営業利益は同39.3%減の2093万ドル(約30億円)、純利益は同11.3%増の854万ドル(約12億円)だった。フットウエアは好調だったものの、卸とアパレルが不調で、特に本拠地である北米市場で苦戦した。
リナーツ社長兼CEOは、「30年におよぶ経験と高い実績を持つジョンを『アンダーアーマー』ファミリーの一員として迎えることができ、とてもうれしく思う。プロダクトチームと密接に連携し、機能性とスタイルをうまくブレンドしながら、アパレル、フットウエア、アクセサリーをそのコンセプトから商品化までうまく導いてくれるだろう」と語った。