ラッパーのキッド・カディ(Kid Cudi)が、ファッションブランド「メンバーズ オブ ザ レイジ(MEMBERS OF THE RAGE以下、MOTR)」を立ち上げた。かつて「ア ベイシング エイプ(A BATHING APE)」NY店のスタッフだった彼は、ある日、来店したカニエ・ウェスト(Kanye West)に自分のラップを吹き込んだデモCDを渡し、チャンスをつかんだ。今では、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のランウエイを歩き、「コンプレックスコン(ConplexCon)」の最盛期にライブのヘッドライナーを務め、メットガラにも登場。ラッパーとしてもファッションアイコンとしても世界中に認められ、アメリカンドリームを体現した人物である。「MOTR(モーター)」は、ポップなカラーリングと愛らしくコミカルなグラフィックが特徴。イタリア製で仕立てにもこだわり、随所にファッション好きのカディのDNAが息づいている。デビューコレクションの着想源は“常識に反する人々”。まるで、常識を覆してきたカディ自身の生き方を重ねたようなパワフルなコレクションだ。このほど、「ヌビアン ハラジュク(NUBIAN HARAJUKU)」でポップアップイベントを開催。レセプションパーティーでカディを直撃した。
――なぜ、ファッションブランドを始めようと思ったのか?
キッド・カディ(以下、カディ):俺にはスタイリストがいなくて、衣装も全て自分で用意している。だから、これまでは自分で店に行って買っていた。コンシューマーの立場に近かったんだよ。でも、いつからか自分が本当に欲しいと思うものが減ってきて、好きなものを買うところが少なくなってしまった。だったら自分で好きなものを作ればいいじゃないかと思ったんだ。アイデアはたくさんあったから、ブランドを始めることにした。
――“MEMBERS OF THE RAGE”というネーミングの由来は?
カディ:"MEMBERS OF THE RAGE"は元々、俺が作りたい映画のタイトルだった。このタイトルはファッションだけじゃなく、レコードとか、いろんなプロジェクトで使っている。"THE RAGE"は、"怒り"(直訳すると「怒りを持っているメンバー」という意味)。現状に不満を抱えている人々にも、勇気を出して一歩を踏み出してもらいたい。そういうメッセージを伝えたくて、このタイトルを選んだ。
――今シーズンのコレクションのコンセプトは?
カディ:初めてのコレクションで、アイデアはたくさんあったけど、実際にどんなものが売れるか分からないから、まずは全部のアイデアを出して、その中から今シーズンのムードに合うものを選んだ。今は、1990年代のグランジやヒップホップが面白いと思っている。今回はやりたいことにチャレンジした感じかな。次のシーズンのコレクションを作るタイミングで、今回のコレクションを参考にできればいいね。一過性のブランドではなく、先々のシーズンのことも視野に入れながらデザインしているよ。
――UFOのロゴはプライベートでも親交の深いNIGO®︎さんとのコラボレーションで生まれたと聞いた。NIGO®︎さんとの一番のエピソードは?
カディ:たくさんの思い出があるけど、一番の思い出は、やっぱり「ベイプ(BAPE)」のNY店で働いていたときかな。2007年に、たまたまNIGO®︎さんが店に来たことがあるんだ。スタッフの間では、店にNIGO®︎さんがたまに立ち寄るって噂されていたんだけど、ある日、本当に現れた。初めて本人と会ったときは、すごく興奮したよ。NIGO®︎さんのおかげで、いろんな人に出合うことができている。VERBALさんもその一人だね。俺はTERIYAKI BOYZ®も大好きなんだ。
――「ヌビアン ハラジュク」でポップアップイベントを開催することになったきっかけは?
カディ:チームで世界のどこのお店でコレクションを取り扱ってもらうべきか話し合った。もちろん、東京でもやりたいと思っていて、その中で「ヌビアン」が候補に上がった。ファッションでトップティアの「ヌビアン」で、自分のコレクションを絶対に取り扱いたいと思ったから、実現してとてもうれしいよ。
――日本滞在中に楽しみにしていることは?
カディ:食べ物かな。俺はハンバーガーが好きなんだけど、日本で一番好きな食べ物はカレーだね。日本に来て一番楽しみにしている。「カリーアップ(CURRY UP)」は最高だよ。