繊維商社のヤギはオーガニックコットンで、原料となる綿花を栽培する農場から糸までの一貫したトレーサビリティーの構築に乗り出す。同社は年間1400t、衣服換算だと500万〜600万着に達する、日本最大のオーガニックコットン糸のサプライヤーの一つ。主力調達先のインドで、オーガニックコットンの偽装問題が発生したことから、独自のトレーサビリティーシステム「コットン・アイディー(Cotton iD)」を構築。9月の糸の出荷分から対応を始めた。同社は今後、インド経由の綿花のほぼすべてをこの仕組みに切り替え、日本だけでなく世界で展開していく。
オーガニックコットンは、米国やインドの農林水産省にあたる政府機関が出す綿花農場を対象にした認証(USDA認証・APEDA認証)と、業界団体(GOTS)による綿花綿(ワタ)と紡績工程を対象にした認証(GOTS認証)が分かれている。インドでは、この仕組みを悪用した一部の業者が各地の農場から綿花が持ち込まれるジニング(綿花ワタの精製工程)工程で、認証以外の農場の綿花を混入。実際に生産されたオーガニックコットン綿花よりも、オーガニックコットン糸の方が遥かに多くなる、偽装問題が発生した。
ヤギはインドの有力オーガニック綿紡績企業ナハール・スピニング・ミルズ(Nahar Spinning Mills)と組み、2つの認証をそれぞれ結びつける仕組みを構築した。福盛昭二ヤギ第一事業部長は「現在は手作業でひもづけしているが、今後はブロックチェーンなどの仕組みを活用するなど自動化を進める。インドでのオーガニックコットンの偽装は、日本ではそれほど話題になっていないが、インドから多くの繊維製品を調達している欧米の有力ブランドでは大きな問題になっており、『Cotton iD』には欧米企業から強い引き合いがある」という。
ヤギは、9月以降に出荷する糸はこの仕組みに切り替えており、同社で扱う9割近いオーガニックコットンは、この「Cotton iD」対応になる。取引先からリクエストがあれば証明をつけることも可能という。
ヤギはオーガニックコットン糸では日本最大のサプライヤーで、傘下にはオーガニックコットンタオルの生産量で日本一のツバメタオルも有している。