企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はメルカリ2023年6月期決算書から、同社が作る経済圏について解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2023年9月11日号からの抜粋です)
2023年1月16日号の連載ではメルカリのビジネスモデルについて解説しましたが、今回は日本国内の事業にフォーカスします。なぜなら、流通取引総額(GMV)が今年1兆円を超えようとしているからです。
23年6月期、連結売上高(国内メルカリ、メルペイ、米国メルカリなどの合算)は1720億円で、黒字化して営業利益が170億円と営業利益率10%という好業績でした。売上高はずっと右肩上がりですが、営業利益は21年6月期に1度だけ黒字化したものの、あとはずっと赤字。今回は創業10周年ということもあり、経費をコントロールすれば、利益が出せることを知ってもらうために、あえて利益を出したのではないかというのが、私の見立てです。これまで広告宣伝費をかなり使っていましたが、23年6月期はそこに少しブレーキをかけているのが分かります。また、米国事業でも広告宣伝費を削減して、減収ですが、赤字幅も減らしています。それで利益を出した形です。
売上高の大本になるGMVもずっと伸びていて、23年6月期で国内は9846億円。米国事業を入れれば、すでに1兆円を超えていますが、24年6月期も10%成長を計画しているので、今期中に国内事業だけで1兆円を超えることが予想されます。13年創業で、10年で国内でGMVが1兆円規模になるというのは、すごいことですね。
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