サステナビリティ

オーパがスタートアップと協業 古着を再エネ原料に

新興企業のバイオテックワークスエイチツー(BIOTECHWOORKS-H2)は このほど、廃棄衣料を水素化するプロジェクト「バイオテックワークスエイチツー」を発表した。イオ ングループの商業施設オーパがパートナーとなり、 両社は2025年をめどに新たな古着回収プロジェクトを開始する。オーパ主要店舗で回収した古着を、 同社のプラントで水素化し、オーパ施設の再生可能エネルギー源として活用する構想だ。

「ファッションの楽しさを失わず、
無理なく循環させたい」

WWDJAPAN(以下、WWD):オーパは過去にも古着の回収を実施しているが、そこで見えていた課題は?

渡邉祐子オーパ社長(以下、渡邉社長):ファッション業界でビジネスを成長させてきた私たちは、ファッションロスに何らかの形で取り組まなければいけないと思い、数年前から、各店舗での衣料回収を実施してきた。従来回収したあとの対応は他社に任せていたが、本質的なサステナビリティを目指すならば、回収した後も自分たちが責任を持って循環させていくべきではないかと思っていた。そこで出合った1つがバイオテックワークスエイチツーだった。

WWD:バイオテックワークスエイチツー創業のきっかけは?

西川明秀バイオテックワークスエイチツー 代表取締役CEO(以下、西川CEO):私はテキスタイルメーカーのやまぎんで、環境配慮型素材の開発に注力してきたが、サステナブルな産業に転換していくためには作る側としてできることには限界がある。作った後に出るゴミを正しく処理する方法も同時に考えていかなければいけないと思ったのが始まりだ。特に繊維商品は、繊維の種類が多く分別ができず廃棄が非常に難しい。ファッションの楽しさを失わず、無理なく循環させる方法を考えたいと思った。

各テナントから出る
ごみ全てを再エネ化

WWD:具体的には?

西川CEO:プロジェクトの参加者には、食品トレーをスーパーに持参する感覚で着なくなった衣類を回収拠点に持ってきてもらう。回収後は当社で仕分けをしたのち、リサイクルが難しいものは専用プラントで水素化する。アパレル商品はボタンやファスナーなど、付属品が多く分解する作業が手間だったが、私たちはそれらをそのまま裁断機にかけて1 0 c m ×10 c m程度の大きさにしたのち、プラントでガス化する。ガス化とは、燃やさずに燻製のような手法で煙を抽出する手法だ。煙は一酸化炭素と水素で構成されるため、そこから水素を取り出すという仕組みだ。水素は再生可能エネル ギーとして協力企業に活用してもらう。一方の一酸化炭素は二酸化炭素にして、ドライアイスなどに使用する。今回であればオーパの飲食テナントにも炭酸ガスとして使ってもらうこともできる。古着の回収量から、どれだけ再エネ化できたか、焼却処分した場合と比較してどれだけ CO 2排出量 に削減したかといったエビデンスも提供で きる。来年の4月からは、プロジェクトの協 力企業に向けて環境貢献度が見える事前サービスを開始する予定だ。

WWD:これまでのゴミ処理のスキームを大きく変える技術だ。

西川CEO:私たちの強みの1つは、どんな商品でも再資源化できること。オーパのお客さまには好きな商品を購入してもらって、あとはオーパを通して私たちに任せてもらえば正しくリサイクルできる。オーパとお客さまの信頼関係構築にもつながるのではないかと思っている。まずは衣類から始めるが、ゆくゆくはオーパの各テナントから出るごみ全てを再エネ化できる。

渡邉社長:初めて聞いたときは、本当にできるの?と思ったのが正直なところだ。それでも、話を聞けば聞くほど興味深い。ファッションの課題を解決していくために一緒に踏み込んでいこうと思わせてくれるパートナーだった。

2025年度に日本での
プラント建設開始を目指す

WWD:今後の展開は?

西川CEO:すでにオーパのインフォメーションカウンターの制服に関してはシーズンの切り替えのタイミングで回収しているが、2025年度に日本でのプラント建設開始を目指しており、建設開始後に回収を本格的に進める。

渡邉社長:主要7店舗で回収を始める。当社の顧客層は若い世代が中心だ。環境に意識の高い彼らとアクションを起こし、実績を積めれば、イオングループや地域全体にも広げられ、業界の未来に貢献できる。

西川CEO:ゆくゆくは、日本全体を変えて いきたいし、日本のファッション企業のカー ボンニュートラル化を後押ししたい。

横浜ビブレの制服から協業始まる

オーパが運営する横浜ビブレでは今年4 月から、インフォメーションカウンターで働く従業員の制服にやまぎんが開発した機能素材「ゼロテックス」を採用している。秋冬の制服のデザインは、ファッションを学ぶ学生から案を募った。従業員とお客さまの投票の中から横浜fカレッジに在籍する長沼綺星(ながぬま・きらら)さん(写真・左)の制服が選ばれた。着なくなった制服は、バイオテックワークスエイチツーの回収スキームに乗せる。

PHOTO:SHUHEI SHINE
問い合わせ先
株式会社BIOTECHWORKS-H2
広報担当 仁谷
03-5422-9701