豊島の2023年6月期決算(未上場)は、売上高が前期比17.1%増の2248億円、営業利益が同74.4%増の71億円、経常利益が同58.3%増の90億円、純利益は4.6%増の56億円だった。アパレル市況の全般的な回復の後押しを受けたほか、主力のアパレルOEM・ODM事業で、「物流費の改善など細かな利益改善を積み重ねた」(豊島半七社長)ことが利益を押し上げた。経常利益は過去最高を更新した。
粗利率は0.5ポイント改善の12.4%。一昨年のロックダウンによる生産遅延などを防ぐために、これまで主力だった中国に加え、ASEANでの生産を拡大し、リスク分散をすすめている。ASEAN生産は「23年6月期で初めて全体の2割を超え」(豊島社長)、納期遅れなどの削減にも寄与した。
「アセアン生産拡大は今後も続く」 豊島社長との一問一答
決算発表での豊島社長とメディアの主な一問一答は以下の通り。
ーー23年6月期を振り返ると?
豊島半七社長(以下、豊島):増収の大部分は、(相場と連動して変動の大きい)綿花事業によるもの。利益では、主力の製品事業が全体を底上げした。既存の取引先からの発注が増加した。全般的にアパレル市況の回復が寄与した。足元でも引き合いは強く、上期(23年7月〜12月)は堅調に推移しそうだ。
ーー増益の要因は?
豊島:輸送費高騰の影響を改善すべくコンテナの混載率を高めたり、1枚あたりのコストを下げたりと、特定の施策というより、現場での細かな収益改善の積み重ねが全体の収益を押し上げた。コスト改善は永遠の課題だが、23年6月期に関しては丁寧な仕事ができた結果だと評価している。
ーーASEAN生産拡大の理由は?地政学的リスク?
豊島:地政学的なリスクを避けるというよりは、安定した品質で素材や付属から一貫生産できるエリアを拡大しているという方が実際の考え方に近い。コロナ禍の最中にロックダウンなど一部で生産遅延が発生した。そうしたリスクを避けるために、アセアン生産が結果的に増えている。ベトナム、インドネシアに加えて、南アジアだがバングラデシュも戦略拡大エリアだ。23年6月期で初めて中国以外の生産が全体の2割を超えた。
ーー24年度の方針は?
豊島:売上高2000億円、経常利益75億円の計画。相場で100億円単位で売り上げが上下する綿花事業に関しては、いくつかのルールを決めて運用する。祖業であり、かつては「相場の豊島」とも言われたが、リスクが大きく、事業としてギリギリやれる規模にまで縮小する。約250億円の減収要因になる。
ーー強化分野は?
豊島:海外輸出と異業種コラボだ。当社は「繊維」商社ではなく、ライフスタイル全般をターゲットにした「ライフスタイル提案」商社を打ち出している。電化製品やフード領域など新しい領域を強化する。