ドイツのシューズブランド「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」は9月12日、米国証券取引委員会(SEC)にIPO(新規上場)の申請を行なった。7月ごろからIPOを検討しているとの臆測が広まっていた。現時点では公開株式数や価格などの詳細は未決定だが、業界関係者によれば、評価額は80億ドル(約1兆1680億円)強になる可能性もあるという。
今回、申請とともに提出された財務諸表によって初めて同社の業績が明らかになった。それによれば、2022年9月通期決算の売上高は12億ユーロ(約1884億円)、調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は4億3460万ユーロ(約682億円)、純利益は1億8700万ユーロ(約293億円)だった。同社の主力市場は南北アメリカと欧州で、前者は22年度の売上高の54%を、後者は36%を占めている。D2Cも好調で、18年から22年にかけて42%の成長率となった。
「ビルケンシュトック」は、1774年にヨハン・アダム・ビルケンシュトック(Johann Adam Birkenstock)が教会の公文書に「臣民の靴職人」と登録されたことを起源とする、250年近い歴史を持つシューズブランド。1896年には柔軟性のあるインソールを発売し、その後も医療用サンダルなど足の健康を守る機能性や履きやすさを重視した商品を主力としている。一方で、ここ数年は「リック・オウエンス(RICK OWENS)」や「ヴァレンティノ(VALENTINO)」とコラボレーションをしたり、パリ・ファッション・ウイークでコレクションイベントを開催したり、キャンペーンのモデルに“シューズ界の王様”と呼ばれるマノロ・ブラニク(Manolo Blahnik)を起用したりとファッション性を強めている。2021年2月には、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)系の投資会社Lキャタルトン(L CATTERTON)と、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者の一族の投資会社フィナンシエール アガシュ(FINANCIERE AGACHE)に過半数株式を売却した。当時、「ビルケンシュトック」の評価額は明らかにされなかったが、40億ユーロ(約6280億円)程度だったといわれている。