「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、X(Twitter)やFacebook、Instagram、TikTok、そしてThreadsをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。今回は、デザイナーのクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)とコラボする「ユニクロ:シー(UNIQLO:C)」の話からスタート。
ソーシャルエディター津田:最近、SPA企業とブランドのコラボレーションや、デザイナーとタッグを組んだ新ラインが増えています。特に「ユニクロ(UNIQLO)」は、英国人デザイナーのクレア・ワイト・ケラーとの「ユニクロ:シー」のほか、「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのラスト・コラボ・コレクションも話題に。
一方、「H&M」はヘロン・プレストン(Heron Preston)とのパートナーシップでコラボレーションプラットフォーム「H2」をスタート、「ザラ(ZARA)」も写真家のスティーブン・マイゼル(Steven Meisel)が撮り下ろした“スティーブン・マイゼル・ニューヨーク コレクション”など、たくさんのコラボやパートナーシップの発表がありました。
SNSではその度に話題になりますが、ブランド同士のよくあるコラボより、バズり方やツイート数などがケタ違いです。やはりSPA企業は、数あるブランドの中でもマスへの認知度が格段に高く、加えて最近のコラボは高感度なファッションラバー達からも評価が高いように思います。
> 「WWDJAPAN」公式インスタグラム 「ユニクロ:シー」インスタグラムライブ
「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ」や「ユニクロ:シー」は「WWDJAPAN」のインスタグラムライブでも紹介しましたが、コメントやリアクションも多く読者との相性を感じました。これからも定期的にインスタグラムライブを行いたいと思います。村上さんは、SPA企業のどんなコラボが印象に残っていますか?
記者村上:やっぱり記憶に残っているのは、「H&M」とカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のコラボレーションですね。もちろん「シャネル(CHANEL)」や「フェンディ(FENDI)」ではなく、個人としてのコラボレーションでしたが、ファストファッションの「H&M」と皇帝のタッグは、ブランドの存在感を大きく押し上げたし、「価格って?」という疑問さえ投げかけたと思います。「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」や「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」(当時)、そして「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」など、「H&M」のコラボレーションは、タッグを組むブランドのビジョンを「H&M」の価格帯で提供することで、“ファッションの民主化”を図る取り組みですよね。
一方、「ユニクロ」とデザイナーの協業は、「ユニクロ」が掲げる「ライフウエア」の違う形での提案のように思います。その意味で、コラボを知ることは「ユニクロ」を知ることに繋がるという点で、賢いなぁと思います。
気になるのは、熱烈なブランドファンによるネガティブな反応です。かつては、「ファストファッションとのコラボは、ブランドの価値を毀損するのでは?」とか「ブランドらしい洋服を手頃な価格で提供してしまったら、そのブランドの洋服を買わなくなるのでは?」なんて懸念、「ファストファッションとコラボするなんて!」というショックがあったように思います。そんな反応は、今なおSNSに存在するのでしょうか?
津田:「H&M」とカール・ラガーフェルドのコラボレーション発売時、私はまだ小学生でしたから当時の話は新鮮に感じます。やはり衝撃的なコラボだったんですね。私も大人になってから、カールの顔がプリントされたTシャツをメルカリで探した記憶があります。(笑)
SNSでの反応ですが、「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ」のファーストコレクションが発表された際は「もう買わない」や「ユニクロとコラボしないで欲しかった」などネガティブな意見が散見されました。実際私も「素材の開発から、工場や職人との話し合いまでこだわり抜く『マメ クロゴウチ』がなぜ『ユニクロ』と?」と思いましたが、発売されると大盛況。ブランドの美と高級感を損なわず、世間の評価をあげていったように感じます。コラボは第6弾まで続き、今回がラスト・コレクションとなってしまいましたが、「買いだめしなきゃ」と悲しみの声をよくSNSで見かけました。
「ユニクロ:シー」はデザイナーのクレアが「ジバンシィ(GIVENCHY)」のアーティスティック・ディレクターを務めていた以来、久々に表に出てきたこともあり期待の声がほとんどでした。「H&M」とヘロン・プレストンのタッグもネガティブな反応は見かけません。ヘロン・プレストンはストリートブランドのイメージが強いからかもしれません。循環型デザインの実践の場と位置付けていることも、サステナビリティを意識しなければいけない昨今のファッション業界の意向と合致します。
一方「ザラ」の“スティーブン・マイゼル・ニューヨーク コレクション”は、「かっこいい」という声も多い一方、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が手掛ける「セリーヌ(CELINE)」に酷似しているという声もありました。
こうして直近のコラボへの反応を見ると、ネガティブな意見は徐々に減っている気がします。コラボの頻出での世間の慣れと、服のクオリティが上がっていることも関係していそうです。
村上:SPAとブランドのコラボも増えて、みんな慣れてきたというか、「ブランドは毀損されない」し、「ブランドの商品とコラボは別モノ」と理解するようにもなってきましたよね。
特に「ユニクロ」は、「マメ」や「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」とは下着を、「ホワイト マウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」とはフリースをメーンとするアウターをなど、カテゴリーを絞ってコラボレーションする意識が強いから、なおさらブランドのファンも既存のビジネスを毀損しないと理解できるのかもしれません。むしろブランドの商品と、「ユニクロ」のコラボをコーディネートする人も多いですよね。正直、「ユニクロ U」は、比較的「ルメール(LEMAIRE)」な気がしますけれど(笑)、「ルメール」ファンはSNSで噛み付いたりしなさそうだし、双方の違いをしっかり認識して「ルメール」を納得して購入している気がします。「マルニ(MARNI)」とのコラボレーションでは、「マルニ」のインスタグラムアカウントに、フツーに「ユニクロ」とのコラボと、「マルニ」の商品が混在しているクローゼットが映って驚いた記憶があります。クリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)らしいフリーダムな考え方ですが、こうした投稿がまたコラボにまつわるネガティブな印象をあらためているのかもしれません。
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