ジュエリーブランド「リメルリック(REMELRIC)」が登場した。同ブランドは、“都市鉱山”と呼ばれる廃棄された携帯電話やPCなどから採取した金属を精製した“リファインメタル”を主に使用。使われているストーンもデッドストックのものが中心だ。同ブランドは、ジュエリーブランドの「シャランポワ(SHARONPOI)」や「アドリン ヒュー(ADLINE HUE)」を手掛けるシャランポワの安部真理子代表がジュエリー業界のサステナブル促進のために立ち上げたデザイナー支援事業の第一弾だ。
ブランドのディレクターは、日本大学大学院芸術学研究科在学中のREN。ブランド名は、祖母から母、母から彼へ読まれ伝えられた絵本「メルリック まほうをなくしたまほうつかい」からで、便利になりすぎた世の中に対する警告を意味している。展開するジュエリーは、シルバーとゴールド、ボリュームのあるものと華奢なものを組み合わせて変化させられるスタッキングを意識したデザイン。価格は9680〜14万5200円で、オンラインストアおよび、ジュエリーブランド「シャランポワ」と「アドリン ヒュー」の東京・南青山サロンで販売する。
ディレクターのRENと安部代表に、「リメルリック」について話を聞いた。
アートとビジネス感覚のバランスが重要
安部代表とRENの出合いは、同代表がディレクションを手がけていたD2Cジュエリー「アルティーダ ウード(ARTIDA OUD)」がきっかけだった。彼は、同ブランドのジュエリーのファンで、購入したり、同ブランドが運営する多目的スペース「ジ アナザー ミュージアム」を訪れたりしていたという。安部代表がRENのインスタグラムを見て、ダイレクトメールを送りこのプロジェクトがスタートした。ジュエリーの制作の経験がない学生のRENにアプローチした理由は、「スタイリストとのコラボレーションはよくあるが、(学生とのコラボは)新しいと思った」と安部代表。「ジュエリー作りは、技術的なことよりもセンスが重要。アートとビジネス感覚のバランスが取れていると思ったから声をかけた」と続ける。
エイジレス、タイムレスな長く使えるジュエリー
「リメルリック」のブランドコンセプトは、“温故知新”。RENは、「アートやカルチャー、音楽などにインスピレーションを受ける。長く使えるいいジュエリーを提案したい」と話す。ファーストコレクションは友人につけて欲しいリングやネックレスをデザイン。「デザインは悩まなかったが、ものができる過程での調整に苦労したし、楽しくもあった。『リメルリック』はジェンダーフリーでエイジレスなブランド。タイムレスなデザインなので、幅広い人につけて欲しい」と言う。ルックブックの撮影は、REN自身が写真家の川島小鳥に直談判して行った。男性モデルを使った理由は、「ブランドの世界観に溶け込むニュートラルなモデルがいいと思ったから、知り合いのモデルに頼んだ」とREN。これからは、アニマルシリーズなども作っていくようだ。安部代表は、「私自身はどちらかというと、シンプルなものしか作らない。『リメリック』のアシンメトリーのリングなど複雑なものもすてきだなと思った。『アドリン ヒュー』と重ね付けを楽しんでほしい」とコメント。
日本のジュエリー産業の活性化に一役
安部代表は、「アルティーダ ウード」のときから、インドの職人をサポートしたり、インドへのチャリティ活動を行ったりしている。最近では、メード・イン・インドのホームウエア「スミエレ(SUMIERE)」をスタートした。それと同じく安部代表が情熱を注いでいるのがデッドストックの石などを使用したサステナブルなもの作りだ。「アドリン ヒュー」では、一つ一つ個性の違うデッドストックの石や化石など魅力を引き出したジュエリーを提案。ジュエリー業界でも、ガーデンクオーツ(庭園水晶)や従来は破棄してしまうパールなどを使用する動きが広まりつつある。
同代表は、「『シャランポア』も『アドリン ヒュー』もメード・イン・インド。なぜなら、ダイヤモンドのカッティングやパヴェセッティングなど、インド特有の味があるから。リファインメタルを使う場合は、生産ラインを分けなければならず、日本国内で生産しなければならない。だから、新しいブランドを立ち上げようと思った。今後も、デザイナー支援活動の一環として続けていきたい」と語る。「リメルリック」の目玉である“タンク”リングは第二次世界対戦中にフランスで流行した戦車をモチーフにしたジュエリーをモダンにアップデートしたもの。「かっちりした形や複雑なデザインがメード・イン・ジャパンに向いている」と言う。
一般社団法人日本リファインメタル協会の小西祐子理事・広報は、「品質と販売店でリファインメタルを説明する際のガイドラインを制定した。現在は11ブランドが会員で流通量も増えている。今後は広報活動を強化して、ガイドラインを広めていきたい」と語った。