「トリー バーチ(TORY BURCH)」は2004年春夏コレクションをニューヨーク現地時間の9月11日の夜に発表した。会場は今年5月にオープンしたばかりのニューヨーク自然史博物館の別館リチャード・ギルダー・センター(Richard Gilder Center)。「トリー バーチ」は同館オープン後、初めてファッションショーを行ったブランドとなった。天高でゴツゴツとしながらもラウンドしたシェイプに覆われた会場はまるで洞窟の中にいるような雰囲気だが、どこかの惑星に迷い込んだ気持ちにもなる。ユマ・サーマン(Uma Thurman)やナオミ・ワッツ(Naomi Watts)らセレブリティも新作コレクションを目にしようと集まったほか、デザイナーの計らいでニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)の学生たちもファッションショーの見学を行った。
今シーズン「トリー バーチ」が発表したのはエフォートレスな服。「混沌とした世の中では日頃から考えることも多く、頭の中がいっぱいになるからこそ、洋服選びはシンプルなものであってほしい」とトリーは語った。軽くてなめらか、モデルがランウエイを歩くと流れるように動くのが現代に必要なエフォートレスな服たち。ダイナミックなレイヤードでもすっきりと見えるように計算されている。
ファーストルックをはじめ、フューチャリスティックなムードを醸し出すラウンドカットの入ったボンディングジャケットが登場。軽やかな素材使いと流れるようなシルエットのナイロンタフタのスカートを合わせている。同じくツイストを加えてなめらかなシェイプを構築したシルクジャージーのミニドレスもスカートや肩を覆ったショルダーライン。胸元を大きくUネックにカットしたロングドレスなど、全体的に角がなく、丸みを帯びている。
コレクションノートに“aerodynamic curve(エアロダイナミック カーブ)”と記述されているように、丸みを帯びたシルエットやカッティングを意図的に取り入れている。混沌とした世界から吹く強風を軽やかにかわすため、角ばっているよりも丸みを帯びたシェイプで風をうまくかわすのが現代の女性。モデルたちが身に着けるゴーグルのようなスポーティなサングラスはまさに風よけにふさわしく、大ぶりのイヤリングやクラッチバッグ、メリージェーンのシューズなど、全てが丸みを帯びている。
カッティングだけでなく、素材でも軽さを出している。ボリューム感のあるスポーティーなフーディー、ジップアップトップスもシアーな素材で軽く、メッシュのドレスもレイヤーを施したスタイリングだが、軽やかだ。モデルが歩くたびにジャラジャラと音が鳴る鈴を装飾したオーガンジーのドレスも流れるような動きに焦点を当てている。メタリックなダブルフェイスサテンや「トリー バーチ」のロゴをあしらったコート、ワイヤーを入れて張りと丸みを出したビスコースジャージードレスなど、要所要所にどこか近未来的な雰囲気も感じさせる。トリーの考えるエフォートレスな服は単純に着心地や楽さにフォーカスしたものではなく、精密なカッティングとパターン、表情豊かな素材使いなど、クリエーションとしてはとても手の込んだものである。