サステナビリティ
連載 エディターズレター:SUSTAINABILITY 第5回

「工場や職人の名前は公表しない」は過去の話になりつつある

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※この記事は2023年09月19日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

サステナビリティを経営のベースに置いている、もしくは置こうと本気な企業とそれ以外の企業との間で決定的に異なるのが「生産パートナーを開示しているか、もしくは開示しようと準備を進めているか」です。

我々記者が展示会を取材中、製品に使われている素晴らしい素材や加工、縫製を手がけた企業について質問をすると、広報担当者から「それは言えない」と返ってくるのが一般的です。いや、長らく一般的でした。

例えば海外のラグジュアリーブランドは日本の生地を採用するケースが多々ありますが、ブランドはパートナー名を明かさないし、生地メーカー側にも秘匿が求められてきました。あるとき、ミラノの展示会場でひときわ輝き存在感を放っていたのが、ふんわり軽いモノフィラメント生地のドレス。「これ、絶対に天池合繊(当時)の“天女の羽衣”だ」と日本人の一人として誇らしく思ったけれど、名前が明かされることはないから確信は持てないし記事には書けない。そんなことは長らく日常茶飯事でした。

良いパートナーを非公開にして他社より優れた商品を作りたい。それはメーカーにとって長く、当たり前の発想でした。でもこの「当たり前」が今、変わろうとしています。生産パートナーを公開すること、それ自体を価値に変える。それがサステナビリティ経営の基本的になりつつあるからです。

「工房や職人は長い間、あまりに黒子であり続けてしまった」

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