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特集 熱を帯びるサウナ市場 第7回 / 全7回

「フイナム」がサウナをコンテンツ化する広義の編集を実践

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ウェブメディア「フイナム(HOUYHNHNM)」を運営するライノが、東京・日本橋浜町にサウナ、ビールバーを併設したランニングステーション(ランステ)「ととけん(ととのい研究所)」を9月30日にオープンする。5階建てのビルを編集者ならではの目線で、一棟丸ごとプロデュース。発起人は、同社の山本博史「フイナム」副編集長と柴山英樹「フイナム」編集だ。(この記事は「WWDJAPAN」2023年9月18日号からの抜粋に加筆をしています)

「ひょんなことからランニングにハマった」という山本さんは2014年に、ライターの榎本一生さんと「フイナム ランニング クラブ♡」を発足した。当初は、「フイナム」内のブログでメンバーを募集する読者参加型の月一ランイベントに過ぎなかったが、今では、アウトドアメーカーやスポーツメーカーとタイアップ企画を行い、「フリークス ストア(FREAK’S STORE)」とコラボした商品も企画。収益が見込める一つのコンテンツとしてブランド化している。「フイナム」では、2〜3年前からタイアップ以外のマネタイズを作っていく方針を決めた。そのタイミングで、知り合いのデザイン会社から紹介されたというのがこの場所だ。「ランナーでもあり、サウナーでもある僕はよく隅田川周辺を走っているけど、気軽に行ける大衆サウナがなかった」と柴山さん。そこで、ランとサウナを掛けた「ととけん」のアイデアが生まれた。編集者の好きが高じて始まったコミュニティーが、次は拠点まで構え、コンテンツ化させようというわけだ。

ランニングとサウナの相性は良い。「ランニングしてシャワーを浴びて、サウナに入るのがルーティンになっている人は多い。夏場のトレイルランニングでは、山を降って、そのまま川に飛び込むこともある。サウナと水風呂の関係に近い」(山本)。そのサウナは“ちょうどいい”をコンセプトに、湿度たっぷりのサウナ室、16〜17度とシングル(10度以下)の2種類の水風呂、風が通る外気浴スペースを備えた。もちろん、湯船もある。3階の女性サウナ室には、ロウリュしたときの蒸発量が多い「ジール(ZIEL)」というストーブを、5階の男性サウナ室には、円筒状デザインで360度に熱を放射する「イキ(IKI)」というストーブを導入した。ビールバーには、生ビールやクラフトビールを中心にそろえる。各階には、現代美術家の加賀美健による手がきのペイントをあしらうなど、空間自体が“ちょうどよく”デザインされている。もちろん、「ととけん」から走って1分で着く隅田川は景観も抜群で、上野や浅草、スカイツリーといった観光名所へのアクセスも良い最高の立地。河川敷の隅田川テラスはランニングコースとしても有名だ。

メディアならではの手法でマネタイズ

サウナをどうコンテンツ化するのか。「ととけん」では、サウナ、ランステ、ビールバー利用による売り上げに加え、メディアならではの手法を生かし、ブランドやメーカーからの広告出稿、場所貸しのポップアップイベント、「フイナム」とセットにしたタイアップメニューなどによる収益も見込む。オープン直後には、「ニューバランス(NEW BALANCE)」やアイウェアブランドの「イジピジ(IZIPIZI)」とタイアップしたイベントを仕込んだ。そのほかにも、グループラン活動を週1〜2回ペースで企画し、サウナやランイベントも積極的に仕掛けていくという。「場所があることで、新しいコミュニケーションも生まれ、ビジネスの側面から見ても、可能性が広がる」(柴山)。

隅田川沿いに位置する浜町には緑も多く、昔ながらの飲食店や工場といった下町情緒が残る。町づくりに古くから携わる安田不動産が近年、“「手しごと」と「緑」のみえるまち”をコンセプトに、遊休地や空き地にユニークなテナントを呼び込み、町開発を進めている。「ととけん」の場所もその一角だ。「安田不動産が交流会を開いてくれたり、ホテルとの提携を提案してくれたりと心強い」と二人。「ととけん」の裏には、「ニューバランス」の「ティーハウス(T-HOUSE)」が構えるほか、近所には、シドニー発のサードウェーブコーヒー「シングル・オー(SINGLE O)」や園芸店などを抱える「ソルソ(SOLSO)」といった、魅力的な店舗が増えている。

ファッション・ビューティ業界がサウナ市場に参入するには何が必要か?と問うと、「ファッションブランドの感度で作れているサウナブランドがまだ少ない。ファッションのセンスを落とし込めれば、サウナのイメージが変わり業界がもっといい印象になるんじゃないか」(柴山)。「ランニングウエアにもガレージブランドがたくさんあって、スポーツメーカー以外の選択肢が増えてきている。機能とファッションを掛け合わせた普段も着られるようなデザインのブランドも多い。選択肢が多くなれば、モチベーションも変わり、たくさんの人が参入してくれる。既存のスポーツブランドでは表現できないファッション的なデザインとのマッチングがキーになると思う」(山本)と語った。

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