フランス・パリの国立オペラ座の向かいに構える「ユニクロ(UNIQLO)」のグローバル旗艦店が、約8カ月間の改装工事を経て2023年9月15日にリニューアルオープンした。建物は1866年に850席を設ける劇場としてオープンした後、銀行から政府機関へと変遷を辿り、「ユニクロ」が世界的情報発信の拠点となる大型店舗と位置付けるグローバル旗艦店として09年にオープン、世界進出の大きな足掛かりになった。今回のリニューアルにあたっては、劇場だった建物の歴史に立ち返るかのように、1階中央には歌劇場のエントランスを思わせる大階段を配し、吹き抜けにより地上2階・地下1階の3層を見通せる開放感のある空間でより快適なショッピング体験を提供する。歴史的建造物の外観はそのままに、店内の売場面積を従来の2000平方メートルから2265平方メートルに拡張し、観光客と地元パリジャンが行き交うショッピングエリアで世界中からの来店客を迎え入れる。
「パリ オペラ店」が掲げるテーマは、パリと日本のライフスタイルの交流地点。アールデコ調のロートアイアンのフランスらしい階段手すりや、劇場だったころの仕様である大理石が配された壁を一部生かしながらも、フロアや陳列棚は日本の木造建築を彷彿とさせるウッドで構成し、日仏の美学の融合を内装で表現する。地上階ではメンズとウィメンズの人気商品や、リニューアルオープンを記念して先行発売される「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」の2023年秋冬コレクションが並べられ、奥のスペースには新たに設けられた“ヒートテック”製品を扱うスペースが構える。昨年ヨーロッパを襲ったエネルギー費高騰の影響で、電気代節約に繋がる防寒着として“ヒートテック”の認知度が大幅に上昇したという。現在もエネルギー費の値下げは見通しがついておらず、今年の秋冬もさらに需要が高まりそうだ。
メンズ商品を扱う地下1階には、愛着ある服を大切に長く着るためのサポートをコンセプトにした、「リ・ユニクロ スタジオ(RE.UNIQLO STUDIO)」のコーナーを設置。日仏で活躍するアーティスト、サシコヤ(Sashiko-Ya)が手掛けた廃材布を使ったアップリケのほかに、アンティークのボタンへの付け替え、フランスパンやフレンチブルドッグといったフランスらしいモチーフの刺しゅうでリペア&リメークサービスを提供する。
おみやげ感覚の限定品も豊富
その隣には、オリジナルデザインのTシャツやトートバッグを作ることができるサービス「UTme!」もリニューアルを機に新たに導入。天使のロゴが特徴のコーヒースタンド「キュヴェ・ノワール(CUVEE NOIR)」と、ポップなパッケージデザインが人気のオーガニック板チョコメーカー「ル・ショコラ・デ・フランセ(Le CHOCOLAT DES FRANCAI)」、「エルメス(HERMES)」のセットデザインなどを⼿がける日系フランス人アーティスト、サナエ・ニコラ(Sanae Nikolas)、パリの若手インダストリアルデザイナー、トム・デュカルージュ(Tom Ducarouge)らとコラボレーションし、ファッション性の高い限定アイテムを取り扱う。フランスの伝統文化やポップカルチャーをモチーフとした商品が中心のため、パリの新たな土産品として人気が高まることが予想できる。
2階のウィメンズフロアで注目なのは、ランジェリーとパジャマを集約した、壁で仕切られた親密なスペース。リラックスした空間でのショッピング体験の向上を目的に、同スペースとフィッティングルームには、約250年の歴史を持つスイスの高級フレグランスメーカー「ジボダン(GIVAUDAN)」とともにオリジナルで制作したルームフレグランスを漂わせる。同フロアで以前から展開するキッズウエアに加え、新たにベビーウエアも加わった。ゆったりとした時間が流れる空間作りと、取り扱い商品を拡張することで、より幅広い層に満足度の高いショッピング体験をもたらすことだろう。
パリと日本のライフスタイルの交流地点というテーマは、店舗外でも発揮され、パリ国立オペラ座との間にパートナーシップを締結した。オペラやバレエの鑑賞経験がない家族を対象に、特別料金(大人25ユーロ、子ども10ユーロ) で公演を鑑賞するオペラ座のファミリープログラム“マイ・ファースト・タイム・アット・ザ・オペラ(My First Time at the Opera)”の公式パートナーを新たに「ユニクロ」が務める。リニューアルのオープニングキャンペーンには、オペラ座で活躍する若手バレエダンサー7名を起用し、“パリのリズムに合わせて(Au rythme de Paris)”をコピーに、芸術的な躍動感をイメージした広告を展開。芸術の歴史を誇る国、フランスでの文化体験の機会を通して、“生活をより豊かにする”ことをコンセプトにした「ユニクロ」の理念を発信する。