ネクタイを使ったウィメンズの“タイドアップ”が新たな盛り上がりを見せています。ブームの始まりから約1年を経て、スタイリングがさらに進化。これまでのジェンダーレスな装いに加えて、トラッド崩しの着こなしやフォーマルの普段使いなど、新トレンドになじませるアレンジも提案されています。今回は、フォーマルな場面での今季流のタイドアップを、有力ブランドのランウエイショーからご紹介します。
パーティー気分に誘うラブリーなルックを披露したのは「ヴァレンティノ(VALENTINO)」。妖精のような愛らしい淡いピンクトーンの装いに、黒の無地ネクタイを添えて、甘さを引き締めました。ミニバッグとブーツも黒で同調し、強さをプラス。ネクタイを締めるだけでクールな表情が加わるので、手持ちのウエアから別のムードを引き出せる着こなし技です。
チャーミングなスタイルの引き締め役
白シャツにタイを締める基本形が今年の流儀。オーソドックスな印象を抜け出したいなら、色選びがポイントです。甘い色味や妖艶なカラーは、タイドアップにフェミニンなムードを寄り添わせます。
「GCDS」は、ピンクのネクタイルックを提案。ツイード素材のミニ丈ジャンパースカートとロングコートのセットアップをピンクで統一し、キュートさとドレス感をクロスオーバーさせます。さらに、ピンクのサイハイブーツでつやめきをプラス。中央にすっと入ったネクタイが、キリッとした印象に仕上げています。
柄ミックスでアートライクに
ネクタイは体の真正面という目立つポジションに位置するため、印象的なモチーフを主張するのに絶好のアイテム。ウエアの柄と響き合わせる“柄ミックス”のコーディネートは、装いに勢いを加えます。
「アントニオ マラス(ANTONIO MARRAS)」は、花柄のビッグモチーフをコートに躍らせて、アートをまとったような装いに仕上げました。同系色のネクタイにも小紋風の模様を織り込んで、異なる柄同士をミックス。さらに、花柄のタイツでたおやかな濃度をアップさせ、情感豊かに全体をまとめ上げています。オーバーサイズのコートをワンピース風に着こなしつつ、渋めの幅広タイでメンズテイストも盛り込みました。
トラッド崩しが“今年顔”
トラッドやプレッピーの波が押し寄せる中、マニッシュな装いが一気に加速。今年らしい見え具合に整えるには、軽く崩したアレンジが効果的です。
トラッドを大胆に崩すスタイルが得意な「トム ブラウン(THOM BROWNE)」に、時代が追いついてきました。こちらのルックでは、紳士服の装いをクチュールライクにトランスフォーム。ロングコートと膝上丈のボトムスで、長短バランスを演出しました。ツイード系のボリュームがリュクスなたたずまいで、少しゆるめに締めたネクタイがモノトーン・ルックに控えめな主張を添えています。
掟破りのスーツスタイル
タキシードに代表される紳士フォーマルの装いが、ウィメンズのスタイルにもシフトしつつあります。正統派のイメージとマスキュリンなムードでサプライズを仕掛けるために、ネクタイの意外な使い方がポイントです。
「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のタイドアップは、掟破りを連発。タキシード風のセットアップは、腰より上の位置にコルセット状の白ピースを装着。ジャケットはクロップドで、パンツはハイウエスト。ブラックタイはコルセットの上からかぶせるように垂らしました。ベーシックなブラックタイが、目立つポジションで存在感をアピール。ウィットフルで官能的なスタイリングです。
華やかなきらめきをワンポイント投入
ネクタイは“脇役”と思われがちですが、堂々たる主役に抜擢するスタイリングも現れ始めました。風合いや色・柄にインパクトを保たせたタイが、ボディーの正面で視線をキャッチ。残りのアイテムは、控えめにまとめるのがコツです。
「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」の全身ブラックコーデは、ハンサムでモダンな印象。黒の無地でまとめている中、唯一ゴージャスな印象を与えているのが、スパンコールをあしらったネクタイ。漆黒の装いから浮かび上がったかのように、グラマラスな見え具合に仕上げました。静かなきらめきがエレガントです。
コートルックに品格を添えて
上質のシャツとシックなネクタイが同居するVゾーンは、それだけで“きちんと感”を印象付けてくれます。ドレスアップが一発で決まる最強のコンビネーションです。スーツ姿で見慣れていますが、あえて別ムードの装いに組み入れることで、こなれた雰囲気に映ります。
テーラードに強みを持つ「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」は、レザーのロングコートで全身を包みました。端正な仕立ての白シャツと、品格を宿した黒系ネクタイは、申し分なくドレッシー。レザーコートは重いムードになりやすいアウターですが、タイドアップすることで、軽快なクラシック感が備わります。カジュアルなウエアの格上げにも使いやすいテクニックです。
タイドアップが広まって、ネクタイの出番やアレンジにも一段と幅が出てきました。トラッドやフォーマルにひとひねりを加えると、型にはまらない着こなしが完成します。スカーフやネックレスとは異なる、ネクタイならではの雰囲気を効果的に取り入れれば、少しかしこまったお出かけシーンでも堂々と振る舞えそうです。