「プラダ(PRADA)」はミラノ・コレクション・ウィーク中の9月21日(現地時間)に、2024年春夏コレクションを発表した。今季はミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の右腕、ファビオ・ザンベルナルディ(Fabio Zambernardi)=デザイン・ディレクターと共に作り上げる最後のコレクションだ。ザンベルナルディ=ディレクターは1981年に入社。2002年以降プレタポルテからフットウエア、アクセサリーまで全部門のデザインの監修を務めた。ショー最後には、ミウッチャと共同クリエイティブ・ディレクターのラフ・シモンズ(Raf Simons)と一緒に、ザンベルナルディ=ディレクターも観客にあいさつした。
「プラダ」は今季、服を作る仕事への敬意をコレクションに込めた。それは、ミウッチャの仕事を40年以上支えたザンベルナルディ=ディレクターへの敬意でもあるのだろう。コレクションノートでミウッチャはこう語る。「衣服について哲学的に考察したり、ストーリーを提案したり、ということは考えなかった。今回のコレクションでは、手法やテクニック、価値など、『仕事』に焦点を当てたいと思った。私たちは自分たちの仕事を最大限に全うし、美しいものを、 今日のために作ろうと考えた。ありきたりな言葉に聞こえるかもしれないが、それが真実だ」。
変幻自在の“静”と“動”
ショートパンツのウールスーツに、ケープを重ねたモデルが登場すると、天井からスライム状の壁が出現した。これは6月に発表したメンズ・コレクションと同様の演出で、壁=動かないものという固定概念を崩し、観客をコレクションの世界観に引き込む。クリエイションの出発点は、ミウッチャの祖父マリオ・プラダ(Mario Prada)が残したアーカイブだ。ケープにプリントした丸いモチーフは、当時洋服に使っていたパンチングのデザインから着想を得たもの。続く極薄のオーガンジーのドレスは、モデルの動きに合わせて布が漂い神秘的なムードを醸し出す。ベルト付のショートパンツに合わせた花柄のポプリンシャツは、プリントをフリンジに施すことで柄がゆらゆらと動き、ランウエイを仕切る流動的な壁同様に“静”と“動”を自由に操る。
アイレットを刺しゅうしたベルベットのパッチワークドレスや、クリスタルとスタッズを刺しゅうしたカシミヤのポロシャツなど、序盤にプリントで登場したパンチングや植物のモチーフは、後半にかけて手仕事をふんだんに盛り込んで立体的に表現する。ラグジュアリーなポロシャツの上に羽織るユーティリティーコートも手仕事でビンテージ調に加工した。
創業者の好奇心を継ぐバッグ
マリオが創業当時に発表したシルクモアレのイブニングバッグにオマージュを捧げた新作は、ナッパレザーとリサイクルナイロンの“リナイロン”で再現した。牛骨が使われていた装飾部分は、神話に登場する人物をモチーフにした顔の装飾に。一点一点手彫りのため、それぞれに表情が異なる。
創業から5年足らずでイタリア王家御用達になった同ブランドの歴史の背景には、マリオ創業者のモノづくりへの際限ない好奇心と情熱、そして手仕事があったからこそ。ミウッチャは今季、その精神に立ち返りつつ現代に必要な美意識を定義した。