ファッション

「トッズ」はキアッポーニによるラストショー 舞台美術の工房でクラフツマンシップを讃える

「トッズ(TOD’S)」は、ヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)=クリエイティブ・ディレクターによる最後のコレクションを9月22日(現地時間)に発表した。「ジバンシィ(GIVENCHY)」「グッチ(GUCCI)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などで経験を積んだキアッポーニ=クリエイティブ・ディレクターは、2019年に同職に就任し2020-21年秋冬シーズンにデビュー。「トッズ」のクラフツマンシップを生かしながらモダンなウエアに昇華し、支持を獲得していたさなかの退任には惜しむ声も多い。

“ファブリカ”(イタリア語で工房の意)と記されたインビテーションには、ペンキの付いた手袋や刷毛、ノコギリといったさまざまな工具の写真が同封されていた。このインビテーションが予感させた通り、会場は舞台美術の製作現場であるスカラ座アンサルド工房だ。会場に入ると、「トッズ」の職人たちがラストを削ったり、シグネチャーシューズの“ゴンミーニの”パーツをくり抜いたりと、観客にクラフツマンシップを披露している。加えて同会場では12月にスカラ座で初演を迎える「ドン・カルロス」に向けた大道具の準備が進行中で、作りかけの舞台装置も並ぶ。ダイナミックなモノづくりの現場を舞台に、ブランドのDNAであるメード・イン・イタリーの素晴らしさを感じてもらいたいという思いを込めた。

職人技が随所に光る
90年代のミニマリズム

コレクションは、キアッポーニ=クリエイティブ・ディレクターのこれまでのクリエイションをたどる集大成だ。ベースはメンズのワードローブで、裏地を省いたノーカラージャケットやサマーウールのスーツは、メンズライクなかっちりした表情ながら軽やかに仕上げている。キアッポーニ=クリエイティブ・ディレクターによるシグネチャーアイテムのポプリンシャツは、着物のような大きな袖が垂れる。そこに今回のキーアイテムの小さなバッグをあしらった、マルチパーパスベルトでアクセントを加える。トレンチコートやブルゾンに使用したレザーは、アイテムによってソフトな風合いに仕上げたり、重厚感を持たせたりと表情豊か。一見シンプルなワントーンコーデでも、実は異なる素材を職人技で上手に調和させている。

1990年代のミニマリズムを取り入れたシンプルなルックを中心に、ブランドのDNAを分かりやすく際立たせたコレクションは、退任前のキアッポーニ=クリエイティブ・ディレクターからの、「トッズ」の揺るがないモノ作りを称えたラブレターのようでもあった。ショーの最後に登場したキアッポーニ=クリエイティブ・ディレクターは、長いランウエイを最後まで歩き観客にあいさつした。

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