花王が化粧品事業のグローバル化を加速する。まずは「センサイ(SENSAI)」「モルトンブラウン(MOLTON BROWN)」「キュレル(CUREL)」の3ブランドを“ファーストランナーブランド”と位置づけ、グローバル化の基盤づくりを推し進める。続いて育成する“セカンドランナーブランド”には「カネボウ(KANEBO)」「ケイト(KATE)」を挙げ、2ブランドへの戦略的投資を拡大する。化粧品事業の売上高は2027年12月期に3000億円規模を計画し、「将来的にグローバル市場のセールスでベスト10入りを目指す」(前澤洋介 花王 上席執行役員 コンシューマープロダクツ事業統括部門 化粧品事業部門長 兼 カネボウ化粧品社長)。
同社の調査によると、グローバル化粧品市場は今後、アジア市場が拡大し、フレグランスやダーマコスメ(皮膚科学に基づいたコスメ)市場が成長すると予測。これらの市場を「大きなチャンス」と捉え、世界の各市場でカテゴリーNo.1となる商品やブランドを作り、グローバルでの存在感を高めていく。さらに、「生産性の向上やM&Aを進めながらポートフォリオの強化を図る」と意気込む。
3ブランドでグローバル本格展開
“ファーストランナーブランド”の「センサイ」は30年までに売上高を3倍に、「モルトンブラウン」「キュレル」はそれぞれ同1.5倍を目指す。
1983年に誕生したプレステージブランドの「センサイ」は、中華圏富裕層を中心ターゲットに、上海の旗艦店出店ほか、ゴルフクラブやヨットクラブ、高級ホテル・スパなどで体験機会を増やし、旗艦店の“サテライト的な役割”として市内の高級モールや百貨店への出店を検討する。ドミナント戦略を進め、中国以外のアジアでも展開する。「アジア市場で『センサイ』のラグジュアリーブランドとしてのユニークで尖ったポジションを確立させたい」。
2005年に花王グループ傘下に入り、欧州を中心に展開する英国発フレグランスブランドの「モルトンブラウン」は、アジア展開を積極的に進める。ブランドの世界観を体現する旗艦店、商品を体験できる高級ホテルアメニティ、ギフト需要に対応するECの3つをベースに展開。ソウル、台北に続き、11月にマレーシアのクアラルンプール、24年にタイ・バンコク、シンガポール、インドネシアへの出店を予定する。
1998年に花王グループに参画した、乾燥性敏感肌に着目したスキンケアブランド「キュレル」は、すでに展開する12の国(日本、中国、タイ、シンガポールなど)の売り上げを拡大し、欧州での進出国を増やす方針。各エリアに応じた肌悩みに対する商品を用意しながら、ダーマコスメ市場でNo.1を目指す。
「カネボウ」「ケイト」はアジア圏強化
“セカンドランナーブランド”の「カネボウ」は、美ではなく“希望”を発信するパーパスドリブンのブランディングを既存進出のアジアの国と地域に広げ、「単なる商品の輸出ブランドではなく、グローバルにブランドづくりを進める」。まずは日本市場で発信拠点となる店舗の育成とOMOを推進し、体験コンテンツに投資する。中国本土への進出も予定する。
「ケイト」は、 東京発のブランドとしてアジアの若年層のファンを拡大する。拠点となる東京は日本人に加えアジア旅行客もブランドの世界観や商品を体験できる“特別な拠点”を今後用意する。またメタバースにも注力し、ブランドの世界観を発信しながら、既存進出のアジア市場の展開を強めていく。
G11とR8はブランド入れ替え
花王は2018年から、グループ全体で抱えていた49のブランドを整理し、グローバル戦略ブランドを11(以下、G11)と国内戦略ブランドを8(以下、R8)に絞り込み、投資を集中してきた。
今年は、18年に選定したグローバルポートフォリオの見直しを図り、「アリィー(ALLIE)」はR8からG11へ、「ソフィーナiP(SOFINA IP)」はG11からR8へと入れ替えた。新グローバルポートフォリオでは、G11に「センサイ」「RMK」「スック(SUQQU)」「アスレティア(ATHLETIA)」「エスト(EST)」「カネボウ(KANEBO)」「モルトンブラウン」「アリィー」「ケイト(KATE)」「フリープラス(FREEPLUS)」「キュレル」を選定した。
R8は、「アルブラン(ALBLANC)」「トワニー(TWANY)」「リサージ(LISSAGE)」「ミラノコレクション(MILANO COLLECTION)」「プリマヴィスタ(PRIMAVISTA)」「ソフィーナiP(SOFINA IP)」「デュウ(DEW)」「メディア(MEDIA)」で固め、18年に選定した「ルナソル(LUNASOL)」「コフレドール(COFFRET DOR)」「エビータ(EVITA)」は選外となった。
今後、現在展開する約30ブランドのうち、G11とR8に選定されていない約10ブランドについては、統廃合を含めブランドの在り方を検討する。これら構造改革費用として、23年12月期には約50億円の特別損失を計上する。