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エスパス ルイ・ヴィトン大阪のシモン・アンタイ展をリポート 世界初公開作品も

ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、1940年代後半から80年代にかけてフランスで活躍した抽象画家、シモン・アンタイ(Simon Hantai)の回顧展「Folding」を、大阪・心斎橋のエスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催している。会期は9月28日〜2024年2月4日。

エスパス ルイ・ヴィトン大阪のために企画した同展は、2022年にパリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンで開催した「シモン・アンタイ生誕100周年記念展」と、2019年の「シャルロット・ペリアンの新たな世界」展に続くもの。今回の展示では、フォンダシオン ルイ・ヴィトン所蔵のコレクションより、アンタイが考案した“プリアージュ(折りたたみ)”の手法を用いて制作した、1960年代初頭から80年代の作品を中心に計9点を紹介する。日本でアンタイの作品を大々的に発表するのは「Folding」が初めて。

アンタイは、1922年ハンガリー・ビアトルバギー生まれ。ブダペスト美術学校で学んだ後、49年に仏パリへ移住。アンリ・マティス(Henri Matisse)やジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)に影響を受けながら、シュルレアリスムやアクションペインティング、抽象表現主義といった多様な表現を取り入れて作品を制作した。アンタイの代名詞といえるのが、60年に自身が考案した“プリアージュ”と呼ばれる手法だ。キャンバスを折りたたみ、またはくしゃくしゃにするなどし、その表面に油彩やアクリル絵具を着色。キャンバスを広げた際に生まれる空白部分に、さらに着色をしたり、しなかったりしながら作品化するスタイルだ。

変化する作風を感じる
3シリーズを展示

“プリアージュ”は、キャンバスのたたみ方や着色方法の特徴によって、8つにシリーズ化されている。同展ではその中の3シリーズを紹介しており、それぞれの異なる手法を通して、アンタイが段階を経て変化、進化し、表現を多様化させていく流れを見ることができる。

会場を進み、まず目に飛び込むのは、同氏が60年代初頭に発表した、“プリアージュ”最初期「マリアル(Mariale)」の3作品だ。タイトルの「マリアル」は、聖母マリアに由来する。「マリアル」は全27作品制作され、1310年のジョット・ディ・ボンドーネ(Giotto di Bondone)の絵画「荘厳の聖母」に描かれた、マリアのマントのひだを折りたたみで表現している。細かく折りたたむことでキャンバス全体に細かい凹凸が広がり、またキャンバス全体が色で覆われているのも同シリーズの特徴だ。

人生をかけて挑んだ
実験的な作品に圧巻

「マリアル」の向かいに展示された2作品は、シリーズ5番目にあたる「エチュード(Étude)」。アンリ・マティス(Henri Matisse)が手掛けた、南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂のステンドグラスから着想を得て制作したという。初期の作品と比べると、折りたたみ面積が大きく、折り込まれて色の付かなかった部分には後から着色せず、空白を生かした画面構成になっている。全て単色でムラなく塗られており、キャンバスの白地との美しい対比が際立っているのも印象的だ。

奥のスペースには、シリーズ8番目で“プリアージュ”の集大成といわれている「タビュラ(Tabula)」の3作品が並ぶ。幅約6メートルの巨大なキャンバスに描かれた作品は、圧巻の迫力だ。同シリーズは、1972年から82年まで用いた作風で、キャンバスを等間隔に縛って結び目を作り、その状態で表面に着色。規則的なグリッドに沿った四角形が反復する、シンプルな構成が特徴。そして3作品のうち2点は、今回が世界初公開という貴重な作品だ。

アンタイは82年に引退宣言をしたものの、その後も絵画制作自体をやめることはなかったという。9点目の「無題 #503(Sans Titre #503)」は、84年に発表した後年の作品だ。同作は63、64年の作品と関連するといわれているものの、絵具があらゆるアングルに滴る様などは、どこか異なる作風のようにも感じさせる。万華鏡のように色彩豊かな配色は、見ると心が踊る。同展の多彩な作品から、アンタイがアーティスト人生をかけて、絵画の実験的試みに取り組んでいた独自の美学を体感できる。

■シモン・アンタイ「Folding」展
日程:2023年9月28日〜2024年2月4日
時間:12:00〜20:00
休館日:ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準じる
場所:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
住所:大阪市中央区心斎橋筋2-8-16 ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5F
入場料:無料
※混雑の際、入場待ちの場合あり(事前予約可)

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