作家・京極夏彦の小説「百鬼夜行」シリーズをモチーフにしたネイルコレクションが人気だ。文喫と台湾発ネイルブランド「エ セク(ET SEQ.)」によるもので、今年8月の発売時は予約販売開始直後に全色セット商品が完売したほか、生産が追い付かなくなり再入荷予約の受け付けを行うなど対応に追われた。この人気を受け、9月14日に刊行されたシリーズ17年ぶりの新作長編「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」(講談社)の世界観をイメージした新作ネイルの発売を決定。爪先で文学の世界観を表現する、新たな楽しみを提供する。
「エ セク」は文学作品をモチーフにしたネイルシリーズが人気のブランドで、インク瓶のようなネイルボトルと羽ペンが付いたキャップ、小説の内容に合わせたキービジュアルとカラー名が特徴。これまでも両社のコラボで宮沢賢治や太宰治のシリーズを発売していたが、今年作家デビュー30周年を迎える京極氏に白羽の矢を立てた。日本人の現代小説家を取り上げるのは初めてだった。
8月に発売したのは「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」「鉄鼠の檻」「絡新婦の理」の5作品をイメージしたネイルカラー5色。文喫を運営する日本出版販売の担当者は、「文喫の店頭では、ネイルに加えて書籍と一緒に買われる方も多く、既存の読者の方はもちろん、ネイルをきっかけに本に興味を持っていただけたお客様が多く見受けられた」と手応えを語る。
人気色は鮮やかなレッドカラー“紅の八潮”の「姑獲鳥の夏」、深い紫色の“鉄御納戸”を取り入れた「魍魎の匣」、付属のマグネットスティックでネイルアートも楽しめる「鉄鼠の檻」だが、「これまでのシリーズは単品での購入が多数を占めていたが、『百鬼夜行』シリーズではセット購入が圧倒的に多い点が大きな違いだ」(担当者)。
これらネイルコレクションの反響と、新刊「鵼の碑」の人気を受け、新色“鵼の碑”(1580円)の発売も決定した。作品からすくい取った「虚実の揺らめき」「交じりながらも混じることはないもの」「光」などの要素から色と言葉を紡いでいるといい、カラー名は「朱く揺らめく偏光の奥に、深く沈む真実の瑠璃色」。紫みを帯びた濃いブルーカラーにメタリックな質感を忍ばせた。既存商品で「姑獲鳥の夏」をモチーフにしたレッドカラーの“紅の八潮”との2色使いも提案している。発売は11月8日で、現在は文喫六本木のオンラインストアで予約受け付けを行っている。