アダストリアは、ウエルネスプロダクトを扱う新ブランド「ムードイズミー(MOOD IS ME.)」を9月27日にローンチした。ヘルスケアやビューティ、セクシャルウエルネス、フェムケアに関わる商品を取り扱う。顧客の前向きな気分(mood)を引き出すことを目指し、人間の生理的欲求である“食欲”・ “性欲”・ “睡眠欲” と、「きれいになりたい」などの自己実現欲求を満たす狙いがある。現時点でブランドオリジナルの商品は製造しておらず、国内外のブランドを自社EC「ドットエスティ(.st)」で販売する。
昨年12月に立ち上がった「ウエルネス営業部」が「ムードイズミー」を率いている。部長を務めるのは渥美昌子氏だ。渥美部長は同社に入社後、ウィメンズアパレルブランド「ヘザー(HEATHER)」のマネジャー、ティーンアパレルブランド「レピピアルマリオ(REPIPI ARMARIO)」の営業部長などを経て現職に就任。コロナ禍で福田三千男会長から新規事業立ち上げを依頼されたことで、渥美部長のブランド構想が始まった。“ウエルネス”をテーマに企画を提案したところ、福田会長に「やってみなさい」と後押しを受けたという。
現在のラインアップは、約5割を「イロハ(IROHA)」や「ウーマナイザー(WOMANIZER)」のようなセクシャルウエルネス商品が占めている。価格は1000円代から数万円代までさまざま。残り5割の商品は、「ワフィト(WAPHYTO)」や「ドクターメディオン(DR. MEDION)」などの化粧品やボディーケアアイテム。その背景には、渥美部長の米ロサンゼルスでの体験がある。「ふらっと立ち寄ったセックストイショップのクリーンな雰囲気がかっこよかった」。また、米「アーバン・アウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS)」のECサイトでセックストイが販売されていたことを知り、「日本でもカジュアルに(セックストイを)売ってみたい」と考えるようになったという。
2つの“アダストリア流”
近年、日本国内でもセクシャルウエルネス製品を扱うブランドが増えているものの、アダストリアの同ブランドは2つのポイントで他社と差別化を図る。1つはターゲットを女性に限定していないことだ。男性向け商品として、「テンガ(TENGA)」のセルフプレジャーグッズ“バキュームカップ”のほか、妊活グッズや精子検査キットといったヘルスケアグッズをそろえる。「ウエルネスや健康へのニーズは男女共に持つものだから」(渥美部長)。
もう1つの差別化ポイントは、セクシャルウエルネス商品をむやみに大袈裟に扱わず、アパレル商品とシームレスに購入できる環境を整えたことだ。いわゆる“アダルトグッズ”ショップでは、アダルトビデオなどを陳列する空間にセックストイを置く。しかし、「ムードイズミー」は「ドットエスティ」に出店しているため、衣服を購入するような感覚でセクシャルウエルネス商品にも手を伸ばすことができる。セクシャルウエルネス商品に抵抗感を抱く顧客にも優しい設計だ。
ブランドの出だしはまずまずだ。「ドットエスティ」で購入履歴のある顧客がブランドページに流入したこともあり、初日の売り上げ予算を達成した。初年度は1億円を売り上げ目標に掲げる。
今後はセクシャルウエルネスのみならず、睡眠やフィットネスなどの関連カテゴリも充実させていく。その一環として、ブランドオリジナル品の開発を進める。12月にはオリジナル基礎化粧品を発売する予定だ。また、イベント開催にも力をいれ、顧客との双方向のコミュニケーション機会を創出するという。具体的には、アダストリアが展開するメンズブランド店舗内にポップアップコーナーを12月に立ち上げ、実際に商品に触れられる場を提供する。