1989年11月に創刊した「クレア(CREA)」(文藝春秋)は今年、創刊25周年を迎える。2014年3月号(2月7日発売)から装いを新たにし、歴史を刻んでいく。石橋俊澄・「クレア」編集長に新生「クレア」の展望を聞いた。
文藝春秋の雑誌の中で、『クレア』は唯一の女性誌だ。「25年前の創刊時、文藝春秋が作る『クレア』は、パッケージはおしゃれだけど中身は読者に媚びていない雑誌として注目を浴びていた。しかし、25年という年月と時代の流れの中で、とんがった部分がどんどん少なくなっているような気がした。文藝春秋らしい女性誌のポジションを取り戻すために、『クレア』のブランディングをし直す必要があった」と石橋編集長はその思いを語る。
まずは、識者に、"読みたい雑誌"のヒアリングを行なった。その中で"今の女性誌はどれも内容が似たり寄ったり。でも、女性たちはこんな情報を知りたいわけじゃない。だから雑誌は読まない"と語る識者に、「クレア」のリニューアルの方向性と未来予想図をぶつけてみたという。すると、「期待していた以上に共感を得られ、背中を押してもらった感じ」と、石橋編集長は笑みをこぼす。さらに、大人の女性が読みたくなる雑誌の条件を洗い出すことに。編集部は年齢も性別も違うし、好きなモノも違うから意見はさまざま。でも、「52歳の俺が読んでも面白いと思える雑誌を作りたいと、目指すべき方向を話した」。参考にしたビジュアルの中で皆が"良い"と思ったのは、オランダで発行されているファッション誌「ジェントル ウーマン(GENTLE WOMAN)」やラグジュアリーブランドが上顧客に配布するブランドブックなど。「カッコよくて、それでいて遊び心もある世界観は、『クレア』の目指すべきところ。人でいうなら、例えば、映画監督のソフィア・コッポラかな。肩に力の入っていないナチュラルな感じとか、同世代はもちろん、若い女性にも好かれているし、本当に良いモノを知っているからこそ醸し出す大人の余裕を持つ女性。そんな知的な人が読んでくれる雑誌」と語る。
新装刊した「クレア」の最大の特徴は、新しいデザイナーを起用したこと。「誌面の余白を生かし、王道でありながら軽妙洒脱なデザイン」とし、「Harper's BAZAAR(ハーパーズ バザー)」や「ELLE(エル)」のデザインを手掛けた「BRONCO」の瀬田祐司にアートディレクションを依頼。巻頭のファッションシューティングは、日本人だけでなく外国人モデルも同時に存在する自由な世界を表現。第1特集の"パリ特集"では、「ただのショップや観光名所の案内ではなく、人選にも考慮して『魅せる』誌面を心掛けた」と言う。現に、作家やクリエイター、パリに在住する文化人などが"知的刺激を受けたパリ"を紹介している。
また、後半の美容ページも大幅にリニューアルを行った。「今までの情報重視の構成から『魅せる』企画へシフトを変えた。ただ、美しくなるだけでなく、カッコ良く生きる姿勢と美容をつなげる企画を提案したい」。4月号(3月7日発売)は毎年恒例の美容特集号となる。「タイトルは『わたしはこの顔で生きていく』。エイジングケアやモテメイクというような企画ではなく、その先にある美容記事を目指し、持って生まれた顔を自信を持って受け入れる、そんなカッコ良さを持つ大人の女性に読んでもらいたい」と話す。
今回のリニューアルを機に、ロゴも刷新した。「インターナショナルにも通用するようなスタイリッシュなフォルムに変更した」。5月号以降の企画も「今までにない切り口で新しい情報を提供し、読者を増やしていく」と石橋編集長。雑誌の生き残りをかけて、「文藝春秋」のDNAが今、動き始める。