ファッション

存在感を増す「アミ パリス」 躍進を紐解く3つの好調要因

パリ発のファッションブランド「アミ パリス(AMI PARIS)」がますます存在感を増している。アレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)が2011年、アパートの一室で始めた同ブランドは瞬く間に人気となり、翌年にパリ・ファッション・ウイークに参加。世界各国にファンを増やし、ビジネスも右肩上がりで絶好調だ。ここでは躍進の理由を、3つのキーワードを挙げて解説する。

ブランド創業から12年、
ビジネスは右肩上がりに成長

当時30歳のアレクサンドル・マテュッシが、自身の名前を冠したブランドをパリでスタートしたのは2011年のこと。「ディオール(DIOR)」や「ジバンシィ(GIVENCHY)」といった名だたるメゾンで研さんを積んだアレクサンドルが披露したコレクションは、シンプルながら確かな存在感を放つデイリーワードローブだった。普段生活するパリの街や近しい友人、家族といった何げない日常にインスパイアされた、シンプルに「着たい」と思わせる上質なリアルクローズだ。トレンドも盛り込んだこなれたデザインがバイヤーたちの目に留まり、シーズンを重ねるごとにファンを増やしていった。

日本市場でも受け入れられるのは早く、15年には東京に日本一号店をオープン。以降、グローバル展開を加速することになる。イギリスや香港、中国本土など世界に直営店を出店。21年、念願のアメリカ進出を果たし、ニューヨークに旗艦店を開いた。

こうしたブランドの成長を語る上で欠かせないキーパーソンが、アレクサンドルのクリエイションをビジネス面で支えるニコラス・サンティ・ウェイル(Nicolas Santi-Weil)CEOの存在だ。家族や友人を大切にするというブランドの哲学をぶらすことなく、新規顧客との接点を広げる数々のコミュニケーション施策を実施した。例えば日本ではギンザ シックス(GINZA SIX)や主要都市の百貨店への出店強化、アジアでは韓国の俳優チェ・ウシク(Choi Woo-shik)をアンバサダーに起用。そのほかにも多彩なコラボレーションを仕掛けて、認知と業績の拡大に貢献した。

21年に投資会社セコイア・キャピタル・チャイナ(SEQUOIA CAPITAL CHINA)の傘下に入ったことも成長エンジンになった。日本における店舗数は今年9月時点で、昨年の5店舗から3倍の15店舗に、社員数は34人から3.5倍の120人に急増している。さらに来年以降も、速度をゆるめず出店攻勢をかけるという。こうした躍進には、創業からクリエイションの根幹を貫くデザイナーの愛がこもった哲学と社員の働きやすさを重視した職場環境、売れに売れているアジア市場の好調ぶりが大きく起因している。

好調要因1:
コミュニティーを重んじる
ブランド哲学

ブランド名の由来は、アレクサンドル・マテュッシ創設者兼クリエイティブディレクターの頭文字であり、フランス語で“友達”を意味する。“友人のために(amicable)”作るコレクションは、着る人を引き立てる洗練されたモダンさやフレンチならではのエスプリが漂う。アレクサンドルが大事にしてきたFriendship(友情)、Family(家族)、Trust(信頼)、Respect(尊敬と思いやり)という創業当初から変わらないこのブランド哲学こそ、ジェンダーも国も超えて多くの共感を生み、コミュニティーを広げ、世代を超えて愛される重要な要素になっている。

好調要因2:
アジアの売り上げがけん引

全世界に出店を加速している「アミ パリス」の中で特に売上規模が大きく、依然としてポテンシャルが高いエリアがアジアだ。世界全体の店舗数は300を超え、故郷フランスのほかには日本、中国本土、韓国、香港、イギリス、アメリカに進出。うち、中国本土には18店舗、韓国には14店舗を擁している。日本でも、昨年オープンしたギンザシックス店を筆頭に絶好調だ。国内需要のみならず、インバウンドの売り上げも大きく貢献しているという。日本では現在の15店舗から、来年中に20店舗体制まで出店を計画している。

好調要因3:
働きやすい制度作り。
スタッフを随時募集

「アミ パリス」にとっての“家族”である従業員の待遇も見直しを重ね、ライフワークバランスの実現に向けた働き方改革に取り組んでいる。例えば年間休日の多さ(125日、有給休暇別途あり)は業界の中でもトップクラス。7〜10日間の長期休暇を年間2回取得できるAMI Happy Holidayという福利厚生プログラムを今年導入した。シングルペアレントのスタッフに対するサポートにも積極的だ。店舗拡大に伴い社員研修制度を強化してスキルアップを図ると同時に、社員一人一人に合ったキャリアアップを重視する評価制度にも力を入れている。今後は、百貨店のラグジュアリーフロアへの新規出店や既存店の拡張リニューアルを加速。本社や店舗において、さまざまな職種でマネジャーやスタッフを募集している。

TEXT : CHIKAKO ICHINOI
問い合わせ先
アミ パリス ジャパン
03-3470-0505