ファッション

パリコレ沸かせた注目メンズモデル3人 大躍進の日本人や絶対に知っておきたい新星

2024年春夏シーズンのメンズ・ファッション・ウイークは、ウィメンズウエアの要素をメンズウエアに浸透させた、性別の垣根を取り払うクリエイションが目立ちました。そんな両性具有のコレクションに欠かせなかったのが、中性的なメンズモデルです。前シーズンの「フェンディ(FENDI)」のオープニングを飾った日本人モデルの源大さんのほか、今後も活躍が期待できそうなフレッシュな顔ぶれを紹介します。

1.源大

「LV」「サンローラン」にも登場
4都市を駆け抜けるワールドクラスの存在感

日本人の源大さんは、今季のメンズ・コレクションでヨーロッパ4都市を横断するほど大活躍でした。ドイツ・ベルリンでショーを開いた「サンローラン(SAINT LAURENT)」では、ホルターネックのフェミニンなトップスにヒールブーツで、エレガントの極致へと誘うルックをまといました。次に、イタリア・フィレンツェ郊外の「フェンディ」の新たな工場を会場にしたショーでは、この地の自然風景を投影させたテラコッタとアースカラーのスーツルックに、手にはコーヒーカップを持って職場へと出勤するリラックスした現代的な男性へと姿を変えます。すぐにミラノに移動した源大さんは、「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」でフーディーとジーンズのカジュアルなルックを引き立て、コレクションに華を添えていました。

今季一番の盛り上がりを見せたパリの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のショーでは、ミリタリーとストリートスタイルを掛け合わせたカーキのムートンジャケットを羽織り、ポンヌフ橋の長いランウエイで堂々たるウォーキングを披露。今年初めに中国が防疫対策を緩和したことで、今季は中国人のモデルもヨーロッパに戻ってきましたが、アジア勢の高い競争率を勝ち抜きビッグメゾンのランウエイを歩く申し分ない成績を残しました。また、大物アメリカ人フォトグラファー、スティーヴン・マイゼル(Steven Meisel)が撮り下ろした2023春夏シーズンの「ランバン(LANVIN)」の広告にも起用され、ランウエイ以外でも華やかなキャリアを築き続けています。

2.レオ・レヴィ

「ディオール」「ロエベ」で印象残す
多国籍な魅力を放つ今季デビューの新人

アミリ(AMIRI)」のショーで強く印象に残ったのが、アジア人のような顔立ちに明るいブルーの瞳がキラキラと光るレオ・レヴィ(Leo Levy)でした。今季デビューの初ランウエイがパリの「アミリ」で、ほかにも「ディオール」では美しい瞳の色とマッチするブルーのポロシャツをまといます。「ロエベ(LOEWE)」ではミニマルな黒のスーツを、「ルドヴィック デ サン サーナン(LUDOVIC DE SAINT SERNIN)」で細身の体形を生かしたノージェンダーなルックで、マスキュリンとフェミニニティーが交差する今季らしいモデルの一人でした。

レヴィはパリの高校に通う16歳で、ニューヨーク生まれのパリ郊外育ち。中国系イタリア人の母とフランス人の父を持つインターナショナルなルーツが、国籍不明の魅惑的な魅力の背景にあるようです。昨年のクリスマスにノルマンディの旅行先のホテルで母親と朝食中に、モデル事務所にスカウトされたのがこの業界に入るきっかけになりました。

モデル業を初めて経験し、最も印象に残っているのは、「緊張感の張りつめるバックステージでは誰もがフレンドリーで、モデルに対する固定観念が完全に打ち砕かれた」といいます。さらに「極度に緊張し、興奮していたから、冷静さを保つのが大変だった」とパリコレデビューを振り返りました。「ディオール」のショーは一生の思い出となったようで、「モデルが一人ずつ乗る51台のエレベーターには独立したモーターが搭載されていて、未来の世界に来たような気分だった。キム・ジョーンズ(Kim Jones)がメンズのクリエイティブ・ディレクターに就任して5周年という記念すべきコレクションに携われたことも、とても光栄」と興奮を抑えきれない様子で話してくれました。

今後もモデル業に前向きで「世界中を旅して新しい場所を発見し、素敵な人々と出会うのが楽しみ」。エーゲ海のように透き通るブルーの瞳で、デザイナーとキャスティング・ディレクターを魅了し、今後も多くのブランドのショーで見られそうな予感です。

3.グスタフ

彫刻のような腹筋に首ったけ
内面は内気で人前が苦手な20歳

源大さんとレヴィのように、性別を超越するスリムな体型のモデルに需要が高まっているものの、従来の“男らしさ”を感じさせる程よく筋肉質なモデルももちろんメンズファッションには必要な存在です。ミラノの「エトロ(ETRO)」でラストルックを飾ったグスタフ(Gustav)の、彫刻のような腹筋に目を奪われたのは私だけではないはず。

今季デビューを果たした彼は、「フェンディ」「ソリッド オム(SOLID HOMME)」「オフィシン ジェネラーレ(OFFICINE GENERALE)」のランウエイを歩き、「クレージュ(COURREGES)」のルックブックにも登場しました。ベルギー・ブリュッセル生まれの20歳で、若くして学校を卒業し、造園業と配達業、高齢者支援といった異なる業種に携わった後、モデルをしていた従兄弟に紹介されてモデル事務所に所属したのだそう。

ファッション・ウイークに参加したのは今季が初めてで、「コンフォートゾーンから抜け出すのは僕にとって最大の挑戦だった」と話します。「控えめな性格なので、注目を集めたり、前に出たりするのが本当は好きじゃない。SNSに何も投稿しないような、典型的な内気男子」と自身を分析します。それでも、挑戦で得た成果は大きく、今はモデルとしてフルタイムで積極的に仕事に取り組んでいます。「初めてのショーだった『フェンディ』は、全てがミリ単位で計算され、最初から最後までチームが協力的。ショーを作る素晴らしさを目の当たりにした。それからSNSへの投稿にも挑戦してみたら、だんだん楽しくなってきて、自分でも驚いていて。自分自身を超えていく楽しさを知れたことが一番の成果。モデルの仕事を通してたくさん旅をし、ファッション業界をもっと深く、別の角度から捉え、何よりもこの業界の発展に全力を尽くしたい」と今後について語ってくれました。

自分の殻を破って新しい世界に飛び込むことは容易ではありませんが、挑戦した体験こそ、人生の財産として人間的な成長につながるもの。体力のある若い間にいろいろな経験を積み、彼の人生が豊かになることを願いながら、その活躍ぶりを母親のように見守りたいです。

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