ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN.com」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、ラグジュアリーブランドが化粧品をエントリーアイテムとして本格活用し始めている話。
【賢者が選んだ注目ニュース】
「プラダ」がビューティ市場本格参入 スキンケアとメイクアップを8月1日発売
「シャネル」から日本の職人が作るガラスケース入り2万5300円のリップスティック
矢野貴久子「BeautyTech.jp」編集長 プロフィール
雑誌編集者を経て1999年からデジタルメディアに関わり2017年、アイスタイルで媒体開発に着手。18年2月に美容業界のイノベーションを扱うメディア「BeautyTech.jp」の編集長に就任
ファッションでも美容でもラグジュアリーブランドはいま、若い世代にも幅広く人気だ。ボストン コンサルティング グループ(BOSTON CONSULTING GROUP)とイタリアの高級ブランド統括団体アルタガンマ(ALTAGAMMA)による調査は、Z世代とミレニアル世代は他の年齢層に比べて可処分所得の中から15%ほど多くをラグジュアリーブランドのアイテムに費やすほど購買意欲が高く、加えて2026年には購入者全体の75%を占めると予測している。
22年はその気配を察知して、Z世代へのアプローチを強めたラグジュアリーブランドが多かった。「シャネル(CHANEL)」の“ヌメロアン ドゥ シャネル”はその中でも本気度が高く、R&Dやサステナビリティ含め、完成度の高いフルラインアップの商品とストーリーでZ世代にも魅力的な姿でローンチされた。化粧品領域のみならず、ブランド全体のエントリーアイテムとしても位置づけられていくだろう。
「シャネル」の例が示すとおり、ラグジュアリーブランドにとって将来、服や靴、小物を購入してくれるかもしれないファンの開拓には、比較的手頃な化粧品が最適なエントリーアイテムになるだろう。この動きに合致するのが、満を持しての「プラダ ビューティ(PRADA BEAUTY)」の登場だ。「プラダ ビューティ」は8月1日に公式サイトでの販売がスタートし、英国の高級百貨店ハロッズ(HARRODS)とセルフリッジ(SELFRIDGES)も取り扱いをスタート。今後はドイツやイタリアなど欧州展開を進め、米国では24年1月から実店舗でも販売予定という。
実質の商品開発は、21年に「プラダ」のビューティ事業のライセンスを取得したロレアルが担当。33シェードのファンデーション、26色のマットリップスティック、古典的な「プラダ」のプリント柄に触発された6つのアイシャドウセット、3種のスキンケア商品、10本のブラシとツールで構成されている。また、いずれもリフィル(詰め替え)可能な容器設計としているのも特徴だ。価格帯は、リップスティック50ドル(7400円)、アイシャドウ80ドル(約1万1800円)、クリーム390ドル(約5万7700円)とプレステージ価格帯である。あわせてバーチャルメイクアップトライオンサービス(プラダ カラー エクスプローラー)と、ユーザーの肌を高度に分析する肌測定器(プラダ スキン デコーダー)も実装していくという。
この「プラダ」のスキンケアとメイクアップコレクションは、26年までに同ブランドのビューティ売り上げの約25〜30%を占めるだろうとの予測もある。これは「プラダ」にとっても、そしてロレアルのリュクス事業のポートフォリオとしても大きなインパクトとなりそうだ。
「ラバンヌ」のメイクはいきなりセフォラに進出決定
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