毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月9日号からの抜粋です)
村上:ミラノは路面電車のラッピングから壁面広告まで、ショーの前から「グッチ(GUCCI)」が街中で一大プロモーションをかけていて、サバト・デ・サルノ( Sabato De Sarno)による刷新に相当気合が入っていると感じました。ロンドンでも、中心街の巨大サイネージに“グッチ、アンコーラ”と映し出していて、後日知りましたが渋谷の駅前でもサイネージジャックをしていました。米「ヴォーグ(VOGUE)」と「WWD」、「朝日新聞」でのインタビュー同時公開にも、「ショーを見てほしい」という熱意が表れていましたね。デビューショー、私はポジティブに捉えましたが、今回のミラノでの最大の拍手喝采は「プラダ」だったかな?
木村:コレクション自体の良さもさることながら、フィナーレに40年来ミウッチャ・プラダの右腕を務めたファビオ・ザンベルナルディ=デザイン・ディレクターが出てきて、歓声がわきました。
村上:私がショーに行き始めた10年程前って、「プラダ(PRADA)」のショーにはみんな前シーズンの「プラダ」を着て来場していたんです。それは当時、業界人がそろって「プラダ」をリスペクトしていたということ。それが、アレッサンドロ・ミケーレの登場で「グッチ」に取って代わられていたんです。ところが今は、「プラダ」も、パリで発表している「ミュウミュウ」も両方がトップブランドとして復活。ミウッチャの影響力を実感するシーズンでした。「ミュウミュウ(MIU MIU)」を参考にスタイリングを組んだミラノブランド、多かったですよね。ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)が「プラダ」に入ったことで、ミウッチャが「ミュウミュウ」に集中できているんじゃないかな(笑)。
木村:「プラダ」は今シーズンもメッセージ性が強かったですが、ザンベルナルディの力も大きかったのでは。ミウッチャのビジョンを具現化していたようでした。彼の引退の影響が気になります。でも、「プラダ ビューティ」も発売しましたし、さらに拡大しそうですね。
村上:そうですね。どのブランドも原料や人件費が上がって、財布などの革小物さえエントリーアイテムと呼べないほどの価格になってきています。そこでエントリーとして期待されるのがコスメ。これまでになく新規顧客の獲得や若い層にリーチするための“入口”として機能しそう。一方で、ウエアやバッグの“適正価格”をどう設定するかは、今後の大きな課題になりそうです。