ビューティ

ファッションPRによるフレグランス「イエ バンドゥ」 創業者に聞く3カ月で黒字化した“自分軸”のビジネス

細川麻里子 / EMME最高経営責任者、ye22ブランドディレクター プロフィール

香川県出身。東京で育ち、大学卒業。米シアトルに留学し、アート・インスティテュート・オブ・シアトル卒業。ニューヨークに移り、日系商社で営業として勤務後、2008年帰国。アパレルの輸入代理店でファッションPRとして働いた後16年、フリーランスPRとして独立。18年にEMMEを設立し、22年「イエ バンドゥ」をスタート PHOTO:TISCH

「ヴェジャ(VEJA)」や「グローブ トロッター(GLOBE TROTTER)」などのPRを行うEMMEが手掛けるライフスタイルブランド「イエ バンドゥ(YE 22)」がデビュー1周年を迎えた。同ブランドは、細川麻里子EMME最高経営責任者(CEO)が2022年8月に香りに特化したD2Cブランドとして創業。ブランドディレクターとしてコンセプト作りから商品開発、販売まで携わっている。

同ブランドが販売するのは、フレグランスとハーブティー。美容成分入りのフレグランス“パルファムシャワー”が好評で、創業後3カ月で黒字化した。12月にはナチュラル&オーガニックのセレクトショップ「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」でエクスクルーシブの香り2種を発売予定だ。細川CEOに、「イエ バンドゥ」に込めた思いについて聞いた。

自分軸のビジネス&女性をサポートするブランド

「イエ バンドゥ」という名前は、聖書の中で“あなた”を意味する“イエ(ye)”とブランドが誕生した年22を掛け合わせたもので、“自分だけのストーリーを生きる”という意味が込められている。ブランドを立ち上げた理由について細川CEOは、「PRは他人任せのビジネス。コロナ禍でクライアントやイベントが減り打撃を受け、人から与えてもらったものはなくなると実感した。会社を継続させるためにも自分軸のビジネスをしたいと思い、ブランドを立ち上げた」と話す。

香りに特化したブランドにした理由は、同CEOが好きな洋服と同じく身にまとうものだから。「直感に訴える香りでポジティブになれるようなブランドにしたい。海外に比べると日本では、経済的・精神的に自立している女性が少ない。私自身にも通じるが、自分軸で物事を捉えて自由に生きる女性を応援するブランドになればと思う」と話す。「イエ バンドゥ」では、香りを通して女性をサポートする商品を開発していく予定だ。現在販売しているハーブティーも女性特有のむくみや更年期障害などの悩みに特化したもので、効能はもちろんだが、飲みやすいように味を研究した。「インナービューティを気にする女性が増えている。朝はハーブティー、日中は“パルファムシャワー”、夜は香水というように香りを通した毎日のリチュアル(儀式)を提案できればと思う」。

実体験から生まれた“パルファムシャワー”

ラグジュアリー・ブランドからニッチブランドまでさまざまあるフレグランス市場で、ゼロからスタートするにあたり、細川CEOが思いついたのが市場にない新しい製品“パルファムシャワー”だ。「香水に美容成分を加えたら面白いと思った。“パルファムシャワー”は美容成分が95%で、スキンケアやヘアケアなどいろいろ使えるし、香りもまとえる。飛行機が苦手で、機内に持ち込めて、スキンケアもでき香りでリフレッシュできるものがあればと思った」。この“パルファムシャワー”がヒット。ブランドをスタートして3カ月後には数千個を販売した。体全体にふんわり香りがまとえるように霧の細かさにこだわり、香水が着けられない医療従事者や飲食店従業員からスタイリストなどから支持されている。使いやすさや価格帯などからギフト需要もあるという。

香りは、“アッパーウエストサイド”“アルカイビーチ”“ヴィルフランシュ=シュル=メール”“ル マレ”の4種類。細川CEOが住んだり訪れたりした場所の情景が着想源だ。メード・イン・ジャパンにこだわり、ナチュラルな香料を使って日本人の調香師が仕上げた。「場所の写真などを盛り込みながら、ブログやSNSで発信して香りのイメージを伝えている」。ベストセラーは、“ヴィルフランシュ=シュル=メール”だ。爽やかで男女問わず使える点と、スキンケアとして一番マッチする香りだからだという。

地道に認知度アップを図り海外展開も視野に

D2Cブランドでありながら3カ月で黒字化できたのは、PRで培ったネットワークが大きい。「友人やインフルエンサーにブランドを紹介してSNSで紹介してもらったり、雑誌に掲載してもらったりした。SNS発信やポップアップショップを行い、地道にブランド認知度アップを図った」と細川CEO。ポップアップでの実売はあまりないが、ムエットを渡すことがオンラインの販売につながるという。「インスタライブが売り上げに直結する。霧の細かさを見て興味を持つ人もいて、SNSと相性が良いと思う」。オンライン注文は当日発送というスピーディな対応も顧客満足度に繋がっているようだ。

現在、売り上げの8割がオンラインだが、リステアなどのセレクトショップへ卸販売もしている。「ブランド立ち上げ時から取り扱いのあるリステアでは安定して売れている。ポップアップの話も増えており、卸を増やしたい」。27年までに年商1億円を達成するのが目標だ。同CEOは、「香りを軸に、ブランドとして価値を高めて大切に育てて行きたい。ゆくゆくは、海外での展開も視野に入れている」。

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