「ギグランプス(GIGLAMPS)」は、中目黒にひっそりと佇むビンテージメガネ専門店だ。店内には、アメリカやヨーロッパで買い付けた、1900年代初頭〜2000年代までのフレームが並び、中には200万円を超える希少性の高いアイテムや、ジョン・エフ・ケネディー(John・F・Kennedy)大統領が着用していたモデルもある。古着に比べて日の目を見ないニッチな“嗜好品”にも関わらず、客層は学生から80代まで、アイウエアになじみがない初心者やコアなメガネファンも通うほど幅広い。同店の松島慶祐オーナーは、古着やスニーカーの海外買い付けなどを経て、2010年に同店を開いた。メガネを通して「かっこいい日本人を増やしたい」と語る真意や同店の強み、おすすめのモデルを聞いた。
かっこいい日本人は舐められない
メガネを“武器”にしたイギリス留学
WWDJAPAN(以下、WWD):メガネを好きになった理由は?
松島慶祐(以下、松島):大学卒業後のイギリス留学時代にハマりました。ロンドン西部のノッティングヒルエリアにあるセレクトショップでのパートタイム時代に、「アメリカンオプティカル(AMERICAN OPTICAL)」の“セーフティ(Safety)”というモデルを着けていたら、ボロボロの状態だったのに周囲から「クールだね」とやたらと褒めてもらえたんです。日本人って体格も小さいし、どこか舐められがちなんですが、ファッションスタイルや見た目が洗練されていると「あいつイケてるよな」って一目置いてもらえるんですよね。それをきっかけに、メガネにのめり込んでいきました。
WWD:それがビンテージメガネ屋を開くきっかけになった?
松島:いいえ、メガネはあくまで趣味で、ビジネスとしてはシューズや古着を買い付けていたんです。日本の店から依頼を受け、海外限定のスニーカーや英国の高級革靴などを購入し、日本へ輸送していました。今は通販や海外オークションサイトで簡単に手に入りますが、当時はそれほど浸透しておらず、比較的いい価格で取引させてもらっていました。利益がでてきたタイミングでアメリカに飛び、「ダブルアールエル(RRL)」などのブランド品の買い付けも始め、そこでようやくビンテージメガネの買い付けも本格化させました。
WWD:買い付けたメガネを当時どのように販売していた?
松島:自分たちでササゲを行い、ヤフオクなどでさばいていました。当初はスピードと物量を重視して、特にメンテナンスもせず買った状態のまま販売していましたね。希少性が高いから状態が悪くてもコアなファンが買ってくれたので、2009年にビンテージアイウエアの取り扱いを本格化させました。「ダブルアールエル」も人気でしたが、アメリカでの買い付けが難航し、10年からメガネ専門のオンラインストアと予約制ショールームに専念し「ギグランプス」を設立しました。初めの予約制のショールームは初台で、2018年に現在の場所に移店したんです。
現行品では見えない世界へ
圧倒的クオリティーでいざなう
WWD:他にはない、「ギグランプス」だけの強みは?
松島:クオリティーです。入念なメンテナンスで、ビンテージのデッドストックを新品に近い状態にまで仕上げます。メンテナンスは石川県の熟練のメガネ職人に依頼し、フレーム1本につき3〜4回のチェックを経て、納得のいく状態で店頭に出します。顔に沿うような形へのテンプルの調整だったり、曇ったヒンジの磨きや、生地のつやを高めたりなど、職人への膨大な量の指示書はとても手間がかかります。ここでしか味わえない別格のクオリティーだからこそ値段は張りますが、その価値を理解してくれるお客さまも多いです。
WWD:ビンテージメガネの魅力とは?
松島:なりたい自分のイメージに合わせて、デザインや生産国、サイズ、質感、年代まで、膨大なストックの中から理想の1本を選べること。ピカピカのデッドストックもあれば、年季の入ったボロボロのものもある。世界的なスターが着用していたといった、歴史的な背景から選ぶのも面白いですよね。ビンテージメガネは、現行品では見えない世界を見せてくれます。
WWD:最後に、今後の夢は?
松島:今年で設立13年目になりますが、100万円を超えるデニムやビンテージ古着と同じように、ビンテージメガネも売買されるような市場作りが今も目標です。ビンテージメガネをかけた“舐められない人”たちがもっと増えて、かっこいい社会になればいいですね。
おすすめするビンテージメガネ4選
【メガネを選ぶポイント】
メガネ選びのポイントはサイズ感ですね。洋服と同じように、サイズ感がハマっていれば大体サマになるし、ものが良くてもサイズが合っていなかったら台無しになる。あとは、ご自身の好きなスタイルに合わせるのもポイントでしょうか。ファッションと異なるものを敢えて着けることも素敵ですが、あくまで王道を知っているからこその遊びでもあります。
【初心者におすすめの一本】
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50~60年代の「アルガ(ALGHA)」セル巻きのメタルフレーム。同ブランドはイギリスの代表的メガネで、ジョン・レノン(John Lennon)やインディ・ジョーンズ(Indiana Jones)も着用していました。ここでは、レンズと横幅の異なる14サイズがデッドストックでそろっており、ジャストサイズを選べるのがうれしいですね。ベーシックなデザインで、シーンを選ばず着用できるのもポイントです。
【とっておきのアーカイブピース】
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「アラン・ミクリ(ALAIN MIKLI)」のアシンメトリーなサングラス。非常にデザイン性の高い、アバンギャルドな一本です。多色展開されていたようですが、こちらは最初に発売された三つのメインカラーです。アートピースに近いかもしれません。
【ビンテージメガネならではの歴史的魅力】
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「レイバン(RAYBAN)」の“シグネット(Signet)”。ジョン・F・ケネディ大統領がダラスでの演説で所有していたモデルです。同氏が弟に宛てた手紙から、暗殺される直前まで所持していたことも分かっています。大統領がつけるほど完成度が高い一本で、フレームは十二金張り。このように、歴史的な価値を楽しめるのもビンテージメガネの魅力ですね。
【アメリカか、フレンチか。最強フレーム対決】
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どちらも100万を超えるアメリカ(上)とフランス(下)の最高峰メガネです。アメリカ代表には、ビンテージメガネの王様「タートオプティカル」から、初期型“アーネル”のアンバーカラーを選んでみました。素材の艶と状態の良さがピカイチですね。フランス代表には、ビンテージフレームフランスの“パリジャン”というモデルです。べっ甲柄がまさにアートピース。いずれも極上の一本ですが、個人的にはアメリカびいきなので「タートオプティカル」に軍配をあげたいところです(笑)。
■ギグランプス(GIGLAMPS)
営業時間:13:00-20:00
住所:東京都目黒区上目黒4-9-2ガレリア2F奥
定休日:水曜日