毎日新聞社は16日、「第41回毎日ファッション大賞」の授賞式を開催した。大賞には「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」の黒河内真衣子デザイナーを、新人賞・資生堂奨励賞にはシンフラックス(Synflux)の川崎和也代表取締役CEOを選出した。
業界に貢献した人や団体に贈る鯨岡阿美子賞は、栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問が受賞した。話題賞は、大谷翔平効果で盛り上がった腕時計ブランド「グランドセイコー(GRAND SEIKO)」と、俳優・アーティストで、アップサイクルブランド「ウィ・ユー(OUI OU)」を手掛けるのん、特別賞は今年創設100周年を迎えた文化学園に贈った。
大賞の黒河内デザイナーによる「マメ クロゴウチ」は、2018年からパリ・ファッション・ウイークでランウエイショーを続けており、今年1月には青山に旗艦店をオープンした。9月には、21年から継続してきたユニクロとのコラボコレクション「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI)」のラストコレクションを発売したばかりだ。登壇した黒河内デザイナーは「一人でブランドを立ち上げてから13年が経った。一番の財産は、ともに働いてくれるスタッフができたこと。私のあだ名だった“マメ”が、私個人のものでなく、スタッフ一人一人のものになったことに、言葉にできないほどの幸せを感じている」と話した。さらに「ファッション業界にはたくさんの課題があり、葛藤し、勉強しながらこなしている。これからも私たちらしいやり方で、誰かにとっての1着を作っていきたい」と続けた。
新人賞・資生堂奨励賞の川崎CEOが主宰するシンフラックスは、テクノロジーを活用して“廃棄ゼロファッション”を目指す、慶應義塾大学の研究チームから独立したスタートアップ企業だ。ゴールドウインとのコラボプロジェクト“シン・グリッド(SYN-GRID)”では、AI(人工知能)とアルゴリズムを活用して生地裁断時の廃棄量を削減するパターンメイキング技術“アルゴリズミック クチュール(Algorithmic Couture)”を使ったアイテムを22年11月に発売した。川崎CEOは「選考員のコメントを拝読したところ、『大賞はストレートに決定し、新人賞は物議を醸した』と書かれていた。私はスペキュラティヴ・ファッションデザイナーと名乗っており、“スペキュラティヴ”とは問題提起や未来に問いを投げかける意味を持つ。審査でも議論を生めて光栄に思う」とユーモラスにコメントした。
授賞式後には、シンフラックスによるプレゼンテーションが実施された。AIが生成した、“インターネット上に存在する海”をイメージした動画をスクリーンに投影し、ゴールドウインとの協業で発表した「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」との防水透湿素材のシェルジャケットと、「ニュートラルワークス.(NEUTRALWORKS.)」のフリースのクルーとボトムを披露した。
さらに、特別ゲストとして「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)」を手掛ける宮前義之デザイナーが登場し、トークショーを開催。“未来のファッションデザイナー”をテーマに、現在のファッション業界が抱える課題や、問題を解決するための仕組み作りについて語り合った。宮前デザイナーは「川崎さんの仕事がしっかりとファッション業界で評価されているということは、時代の変わり目なのだと実感した」と話し、「ファッションには悲観的な側面もあるが、モノ作りで一番楽しいのは職人さんとコミュニケーションを取りながら作ったものを、お客さまが喜んで着てくださること。川崎さんのような新しい視点を持った人と取り組むことで、モノ作りをより発展させることができるはずだ」と締めくくった。
第41回「毎日ファッション大賞」の受賞者は以下の通り。
大賞:黒河内真衣子「マメ クロゴウチ」デザイナー
新人賞・資生堂奨励賞:川崎和也/Synflux代表取締役CEO、スペキュラティヴ・ファッションデザイナー
鯨岡阿美子賞:栗野宏文/ユナイテッドアローズ上級顧問
話題賞:グランドセイコー
話題賞:のん/俳優・アーティスト
特別賞:文化学園