毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月16日号からの抜粋です)
向:3年半ぶりのパリコレでした。コロナ禍でファッションシステムを変えようという動きもありましたが、パリコレのシステムは何も変わっていなかった……。でも1つ大きく変わったのは、セレブリティーの存在感。ショー会場のエントランスの一番いい場所にVIP用の入り口が設けられ、車から降りるところから写真撮り合戦が始まります。ブランド側にコミュニティーの一人としてセレブを扱える人がいることが重要で、それによってブランドとの深い関係性が見えます。ビッグメゾンには軒並み、そういう人がいるようでした。
藪野:仕事上の付き合いだけでなく、セレブやインフルエンサーと日頃から信頼関係を築く“VIPリレーションズ”という役割の人が増えています。大手PR会社には、ブランドを横断してそれを担う専属スタッフもいますね。
向:亡くなったヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)には、有名・無名問わず友人が多く、彼・彼女らがコレクションを着こなして魅力を体現していましたが、デザイナーでそういった交友関係を作れる人は珍しいです。「ミュウミュウ(MIU MIU)」ではスタイリストを務めるロッタ・ヴォルコヴァがその役割を果たしているようで、「ブルマー姿でコレクション会場へ行こう」と思わせるほどに深くセレブのコミュニティーに刺さっているのを感じました。
藪野:コロナ前もコロナ禍も現場を見てきましたが、世界から集まる人気セレブの影響力もあって、大衆的な盛り上がり方は史上最高という印象。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」がシャンゼリゼ通りの会場でショーを開くと、ファンだけでなく観光客もやってきて、もはや“お祭り”でしたね。
向:でも、こういうコミュニケーションが成立するのは、ブランドに強いポリシーがあるから。そういう視点で見ると、欧州のブランド以外では、「コム デ ギャルソン」を筆頭に日本のクリエイションの牙城ができていると感じました。
藪野:そうですね。個人的なベストショーは、「アンダーカバー」でした!でも若手に関しては、メジャーなブランドと時間が被っていたり、会場が離れていたり。スキップせざるを得ないこともあり、残念でした。良いものを作っていても、見てもらえなければ意味がない。そのため複数回に分けたミニショーや時間に幅のあるプレゼンテーションで発表したり、アクセスの良い会場を選んだりという工夫も必要だと感じました。