ファッション

オンリーワンなビンテージミリタリースーツとは? 京都に“帰る”理由02

「オハル ヴィンテージ&リメイク(以下、オハル)」は2021年にスタートした、八田知夏・直紀夫妻が手掛けるビンテージミリタリーのリメークブランドだ。僕はSNSでジャケットやパンツを見て、すっかりそのシルエット美に引かれていた。

オハルの拠点は、京都南部の城陽市にある。京都駅から電車とバスを乗り継いで45分ほど。傾斜地にある住居の階下をアトリエ兼ショップにしている。ハワイ語のような響きのブランド名は、知夏さんの幼少期のあだ名だそう。

夫妻は共に京都のアパレル企業ヒューマンフォーラム出身で、知夏さんは「ギャレリー」で販売や企画を、直紀さんは「スピンズ」「ギャレリー」「ムモクテキ」で店長やバイヤーを務めた。先に妻が独立・起業し、夫がそれに参加する形で今の「オハル」になった。

リメークと古着の仕入れ販売、夫婦の二人三脚

事業は、ビンテージミリタリーのリメークと古着の仕入れ販売からなり、比率は7:3。

リメークの原料とするのは軍物の中古衣料だ。米国軍ものが多く、英国、フランス、ドイツなどのヨーロッパ物が続く。価格は、米国軍の1950〜70年代の寝袋ケースをリメークしたシングルの3つボタン段返りジャケットが5万9400円、共生地を用いたパンツが3万3000円。イタリア軍(サンマルコ海兵隊)の50年代のテント地をリメークしたダブルブレステッドジャケットが6万9300円など。知夏さんは、「できる限り80年代以前のものを使いたいと思っているが、大事なのは時代性より、生地そのものの面構え」と話す。まずは解体して生地の状態とし、アトリエで再構築する。もともとパンツだったものが、ジャケットになることもある。パターンメーキングが素晴らしいと水を向けると、「専門学校時代に習って以来、18年ぶりの実地で(笑)。だから、何度も何度もサンプルを作り直した」と恥ずかしそうに答えた。謙遜もあるだろうが、“個体差の塊”であるビンテージを相手に、かつ一度製品になったものをバラした生地を、ここまでスマートに見せるのはアッパレ!だと思う。

一方、古着の仕入れを担当するのは直紀さんだ。「ダブル アール エル(RRL)」の前身ブランドである「ポロ カントリー(POLO COUNTRY)」「エル・エル・ビーン(L.L.BEAN)」「ペンドルトン(PENDLETON)」「リーバイス(LEVI'S)」など、米国ブランドを中心に国内でバイイングする。「自分が好きなので、気が付くと『ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)』ばかりになってしまって……」と笑う。

「オハル」はアトリエ兼ショップのオープン日をインスタグラムで告知しており、「月に1〜2人の訪問を受ける」。その他、京都市内の物販イベントに参加するなどしているが、リメーク、古着共に「立地上、ネット販売が99%を占める」という。

決して安くはない商品を実際に見たり着たりせずに購入する人が多いのは、同ブランドが設けている“1年間のお直し無料保証期間”(送料は客負担)のおかげかもしれない。「生地の状態で、また製品化後に検品はしっかりしているが、それでも半世紀以上経過したものも多いビンテージが相手のため見逃しているかもしれず、このサービスを実施している。ビンテージ初心者にも安心してもらいたく、長く着てほしい」とまた笑った。

【初訪問を終えて】笑顔の2人が作るから戦闘服もやさしくなる

移動に時間を取られ(ちょっと道に迷ったこともあり……)短い滞在となったが、終始にこやかな夫妻に癒やされた。実際に袖を通したビンテージミリタリー由来のスーツは、やはり美しかった。値段はいささか張るが、オンリーワンな魅力には替えられない。

京都の人でもなかなか行かない(!)という、ベッドタウンの城陽市を訪問できたのも良い経験だった。山が近いが、10月中旬の段階ではまだ紅葉は始まっておらず、ベストシーズンに再訪したいと勝手に誓った。赤や黄色の中で、オリーブカラーや迷彩柄のスーツはきっと映えるだろう。京都に“帰る”理由が、またできた。

超短期連載「京都に“帰る”理由」とは?

かつて月に1度は京都を訪れていた、古着&ミリタリー好きの筆者。しかし行動制限などもあり、気が付けば数年が空いてしまっていた。同期間はSNSがもたらす情報だけが光明で、あれこれ見ていて、“いつか”と思う店が増えていた。このほど、ようやく念願がかない訪問。それぞれに感銘を受け、“帰る”理由がまた増えた。第1弾の「古き良き“町服屋”であの頃にタイムスリップ」は以下をクリック!

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