ファッション
連載 エディターズレター:IN FASHION 第28回

「ミュウミュウ」のブルマールックはある種の “夢” そしてカウンターカルチャーだ

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※この記事は2023年10月24日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「ミュウミュウ(MIU MIU)」のショー会場に集まるブルマー姿のインフルエンサーを扱ったこの記事が注目を集めています。衝撃的ですよね。私が会場で彼女たちと“遭遇”した時は一瞬息をのみ、2度見、3度見をしました。

このスタイルに関して「日常で着るか否か」の議論はナンセンスだと思います。ミニスカートが1960年代に人々に衝撃を与えた後に市民権を得たように、ブルマー姿も将来的に日常着として広がる可能性があるかと言えば個人的にはナシ。デジタル上では、彼女たちが街をブルマー姿で歩き回っているように見えますが、実際には車から降りて会場入り口へと向かう数十メートル、かつパパラッチに囲まれている衆人環視でのできごとです。つまりブルマールックはその“安全圏”だから成立するスタイル。新しいタイプの特権であり、デジタル時代ならではのファンタジーとも言えるでしょう。この先パーティ会場やレッドカーペットでは広がる可能性はありますが、「ブルマーで通勤」がトレンドとはならないはず。

ではなぜ「ミュウミュウ」は「ブルマー」を仕掛けるのか。ブランドから公式発表はありませんが、私には「ブルマー」はお茶目なフリをした強烈なカウンターカルチャーに見えます。

ここで過去のミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)=デザイナーへのインタビューを読んでみましょう。2018年に「WWD」が行ったインタビューで、「SNSの発達に伴いクリエイターたちが潜在的に自分たちのアイデアを抑えてしまう傾向にあることについてどう思うか」と問われたミウッチャは「それは、私の思考の大部分を占めているまさに現在進行中の問題」と前置きしつつ、次のように答えました。「われわれは“秘密結社”を作らなければいけないと思う。もし道徳的に正しくないかもしれないことを自由に表現したり発言したりできないのであれば、思考や思想は進歩しないから」。

ポリコレ時代の今、ゼロイチで新しいことを生み出すクリエイターにとって「やってはいけないこと」はたくさんあります。それは「正しい」けれど「苦しい」。デザイナーの切なる声です。あれから5年ですが、「正しくないかもしれないことを自由に表現したり発言したりできない」環境は強まっています。

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