「無印良品」を運営する良品計画は、2030年8月期の売上高3兆円達成に向けてアクセルを踏んでいる。カギを握るのは売り上げの3分の1を占める衣料品だ。長らく不振が続いていたが、衣料品改革が軌道に乗り、新しいフェーズに入った。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月23日号からの抜粋です)
衣料品事業を占う上で注目を集めるのが、10月13日にリニューアルオープンした「無印良品 新宿靖国通り」だ。2021年9月に「MUJI新宿」の名前でリニューアルオープンした同店を、わずか2年で衣料品に特化した初の店舗へと全面刷新した。売り場面積は4フロアで368坪(1217㎡)。家具や食品などの扱いをやめて、服の売り場面積を2.5倍に拡大した。近隣には9月15日にリニューアルオープンした「無印良品 新宿通り」があり、こちらに生活雑貨や食品を集めて2店舗を買い回れるようにした。
イメージを裏切る店づくり
入店して、まず目を引くのがマネキンの多さである。60体以上のマネキンが置かれ、旬のスタイリングを紹介する。一般的なアパレルショップでは当たり前の光景だが、「無印良品」の店舗はシャツ、セーター、ジーンズといった単品を大量に積み上げたディスプレーが主流で、その付近に男女のマネキンを2体並べる程度だった。
マネキンのスタイリングもトレンドを感じさせる。無印らしいシンプルでナチュラルな組み合わせよりも、クールで洗練されたイメージが訴求されている。全国の店舗から優秀なVMDスタッフを5人招聘し、同店独自のスタイリングを作り出している。
空間演出も変えた。間伐材のホワイトオーク、リサイクルアルミ、リサイクルタイルの組み合わせも従来とは異なる雰囲気を作る。イメージビジュアルを映す大型モニターも、素朴さが特徴だったこれまでの店舗にはなかった演出だ。
消費者から回収した服を染め直しなどでアップサイクルする「ReMUJI」、実験的な服を提案する「MUJIラボ」も充実している。また予約制で専門スタッフによるスタイリング相談やカラーコーディネート診断、フィッティングルームの1時間貸し切りサービスも初めて導入した。大栗麻里子・新宿事業部長は「国内外のあらゆる世代に『無印良品』のオーセンティックな服を発信する拠点にしたい」と意気込む。
ユニクロと重なる壮大な成長戦略
良品計画は21年9月に就任した堂前宣夫社長のもと、30年8月期に売上高に相当する営業収益を3兆円、営業利益を4500億円、国内外の店舗数を2500店にする中期計画を発表した。当時(21年8月期)の業績は営業収益4536億円、営業利益424億円、1002店舗。達成には年100店以上の出店や2ケタ増収が前提となる。1980年の創業からゆるやかな成長を遂げてきた「無印良品」らしくない、野心的な計画として小売業関係者を驚かせた。
ちなみに売上高3兆円といえば、10月12日に「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが今期(24年8月期)の業績見通しを、売上高に相当する売上収益で3兆500億円、営業利益で4500億円と発表して話題になったばかりだ。売上高も利益も良品計画の7年後の数値目標と重なる。堂前社長はファーストリテイリング出身。長年、柳井正社長兼会長の右腕として同社の急成長を支えてきたことを考えると因縁深い。途方もない大きな目標数値を打ち立て、そこから逆算して実現する方法を見いだす経営手法は、柳井氏の影響を受けているといって良いだろう。
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