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双葉通信社がグループ傘下に WORLD MODE HOLDINGSがマーケティング領域を強化

ファッション&ビューティ業界で総合的なソリューションを提供するワールド・モード・ホールディングス(以下、WMH)のグループ傘下に、同じくファッション&ビューティ業界に特化した広告代理店の双葉通信社が加わる。WMHは2014年、当時は双葉通信社のライバルだったアイ・アドバタイジングをグループに収め、マーケティング領域でのソリューション提供も開始。改称したAIADは5年の経営改革を経て、直近の2年は過去最高益を更新している。なぜ今、ライバルだった双葉通信社もグループに迎え入れるのか?また両社は、双葉通信社が16年に日本展開をスタートしたSaaSの「ローンチメトリックス」を含め、どのように更なる成長を図るのか?AIADおよびAIAD LABの社長も務める小西聡WMH常務取締役と、双葉通信社の大川博社長に今回の経緯や将来のビジョンを聞いた。

業界大手4社のうち
2社がタッグを組む理由

WWDJAPAN(以下、WWD):ファッションやビューティ業界に特化して広告代理店業を営んでいるのは、電通グループのThe Goal、博報堂グループの博報堂グラビティ、そして双葉通信社とAIADという印象だ。そのうち2社がタッグを組んだ理由は?

小西聡ワールド・モード・ホールディングス常務取締役兼AIADおよびAIAD LAB社長(以下、小西):WMHは現在、ファッション&ビューティ業界に貢献すべく、人材や教育、店舗運営、空間デザイン、テクノロジー、マーケティング、そして海外という7つの領域で事業を営んでいる。このうち、人材紹介や人材派遣、転職・就職サイトなどを手掛けるiDAは、特にラグジュアリー・ブランドの6〜7割にご支持いただく業界ナンバーワン。かつては競合と競争していたが、今は競合からの事業譲渡が進んでいる状況だ。マーケティング領域でもナンバーワンの企業体を形成し、ファッション&ビューティ業界の1年程前においてトップを走る企業体を有するグループとなって、将来のIPO(株式公開)に向けて弾みをつけたい。WMHとしてこのような展望を描いていたところ、1年程前に今回のご縁に恵まれた。

大川博・双葉通信社社長(以下、大川):他の業界と同じだが、広告代理店の世界も業界再編が続いている。双葉通信社にも資本・業務提携の話はあった。だが大手広告代理店の傘下に入ると、双葉通信社の独自性が失われてしまうのでは?という心配があった。WMHというグループに入ることを決めたのは、人材から空間デザイン、海外展開まで、傘下の企業が提供するソリューションと連携できれば、双葉通信社は今まで以上にファッション産業を盛り上げることができるという道筋と、WMHにおける中核を担う姿がイメージできたから。WMHのさまざまな機能を総動員すれば、今まで以上にクオリティーの高い提案とサービスが提供できる。加えて、私たちはファッションが大好きで、ファッション業界に携わる人が大好きで、ファッション好きのつながりの中でビジネスをしている。そんな文化や風土は、ファッションとビューティに特化している会社でなければ理解できないと思う。

小西:広告、PR、コンサルなど、AIADはマーケティング領域で幅広いサービスを提供しているので、競合するマーケティング企業も多岐に渡るが、他社のクライアントは複数業種にまたがっている。あくまでファッション&ビューティ業界にこだわる私たちとは、目指す立ち位置が異なっていると思う。

デジタルコンサルのAIADと
“攻めの営業”の双葉通信社

WWD:とはいえWMHには、AIADがある。同じ広告業を生業としている双葉通信社とタッグを組むメリットはある?

小西:2017年から経営改革を行ってきたAIADは、事業領域を広告からデジタル、特にEC/CRMなどのコンサル、最近ではブランド投資へと広げている。主軸のひとつは今も広告だが、双葉通信社とは既にビジネスモデルが異なっている。クライアントも重複はない。現在、AIADのクライアントは、スポーツやジュエリー、ビューティなど比較的多様だ。

大川:一方の双葉通信社は、長らくインポートのアパレルに強い。

小西:AIADが経営改革によって強化してきた機能と双葉通信社が長く磨いてきた機能、それぞれのナレッジを共有してシナジーを発揮する。

大川:われわれには400を超える取引先があり、メディアからもさまざまな情報をいただき、“攻めの営業”に長けている。連携してデジタル領域のコンサルも含めた提案ができれば、双方の未来は広がる。

小西:WMH傘下の各社が提供しているサービスは、複合するとより強みを発揮する。たとえばコールセンターを構えようとする会社は、まずは優秀なオペレーターを探そうとする。ファッションやビューティ業界のコールセンターなら、ブランドの知見が豊かな人に働いてほしい。そこでiDAにお声がかかるが、さらなるコーディネーションなどの教育が必要な場合は、同じく傘下企業のBRUSHが登場する。また、コールセンターやオペレーターが吸い上げたデータを分析・活用するためにAIADやAIAD LABが稼働するという具合だ。

大川:双葉通信社の営業部隊は、「これもやって」「あれもやって」の中で「『やりません』を言えない」ほど、クライアント愛が強い(笑)。さまざまなソリューションを総合的に提供できるなら、彼らはもっと活躍できるだろう。

海外展開を進めるWMHとともに
「ローンチメトリックス」をアジアへ

WWD:「ローンチメトリックス」もますます活躍するツールになりそうだ。

大川:7年前に導入し、今年4月には韓国でもサービスを開始し、春には2人の韓国人を新卒採用した。これから中国、香港、台湾、そしてオーストラリアと広げられるチャンスがある。競合と言われるサービスに比べてパフォーマンスのデータ解析に優れ、導入企業は既に100社を超えている。ファッション&ビューティ業界は、転職が多い。導入企業から転職した人が「ローンチメトリックス」を勧めてくれて、活用企業はさらに広がっている。人材領域で一足先に海外進出しているWMHのアセットを活用して、さらに世界に打って出たい。

小西:WMHは2017年にシンガポールで海外展開をスタートして以来、オーストラリア、台湾、ベトナム、マレーシアと拠点を増やし、現在は海外5カ国で事業を行っている。まずは人材ビジネスから取り組んでいるが、今はまさにマーケティング領域も本格展開する段階だ。「ローンチメトリックス」には、その先陣を切ってもらいたい。海外展開を加速するには欠かせない武器になる。

大川:中国本土からの人材採用も進めており、気づけば双葉通信社も国際色が豊かになってきた。可能性を感じているから、あらゆる人材を中で育ててきた。

WWD:メディアの立場では、普段接するのはファッションが大好きな営業ばかり。データ解析やパフォーマンスの向上を担う人材まで社内にいることは知らなかった。

小西:事業のデューデリジェンスを進めた感想としては、双葉通信社はクライアントに真摯に向き合う企業。顔が見える営業を支えるしっかりしたバックアップ体制が整っており、信頼がおける経営陣がそろっている。驚くのは、長年、上位顧客がほとんど変わっていないこと。特定のクライアントと長らく、大きな金額をやり取りできるのは、確固たる信頼関係を築いているからだと思う。

ファッション業界を盛り上げる
新たな仲間に大きな喜び

双葉通信社をワールド・モード・ホールディングスグループに迎え入れることができ、大きな喜びを感じています。初めてこの話を聞いた時、直感的に双葉通信社ならばグループにお迎えしたいと思いました。ともにファッション業界に従事するという共感性の高い企業であり、事業戦略的な相乗効果を期待できると考えたからです。当グループにおいて双葉通信社と同じ広告・マーケティング領域を担うAIADは、双葉通信社で育てられた創業者により45年前に設立されました。誰よりも顧客想いで紳士的なこの創業者に憧れを抱いていたことからも特別なご縁を感じています。ワールド・モード・ホールディングスは、設立から現在までの11年でさまざまな事業会社や仲間を迎え入れましたが、ファッション業界に貢献しようという情熱を持った仲間が集まることには強くこだわってきました。かねてより、双葉通信社の皆様はファッションを愛し、仕事に真摯に取り組まれているという印象を持っていました。皆さまが加わってくれることで、グループはますます活性化すると確信しています。

現在、ファッション業界ではデジタル化の進展とリアル店舗への回帰が並行して進んでおり、顧客との接点がより複雑化しています。加えて、サステナビリティへの意識の高まりなど顧客のニーズも多様化しており、ブランド・企業はデジタルでのコミュニケーションと人間味のあるコミュニケーションの双方を通じて顧客体験を向上させることに注力しています。同時に、業務をアウトソーシングするだけではなく、優秀な人材を確保して社内体制の強化にも取り組んでいます。それらの複雑化する課題に対し、マーケティング領域において戦略パートナーとしてブランドに寄り添うとともに、その実現をリードするプロフェッショナル人材を提供するなど、全方位から顧客のビジネスを支える必要性が高まっていくと考えています。 そして、“サービスを売る”ことが出発点ではなく、“ブランド・企業の成長に最適なサービスは何かを考える”パートナーシップの姿勢が、ブランド・企業に持続的に愛されることにつながっていくと思います。

双葉通信社とAIADが力を合わせることで、ワールド・モード・ホールディングスグループは業界最大規模のマーケティングのプロ集団を有することになります。グループ間のさまざまな事業のシナジー効果をますます加速させ、より顧客に応じた最適なサービスを提供し、ファッション業界を盛り上げて参ります。

問い合わせ先
ワールド・モード・ホールディングス
03-3374-8107