「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は10月、次世代の職人の才能を育てる専門学校「アカデミア ラボル エ インゲニウム(Accademia Labor et Ingenium以下、アカデミア)」を設立した。学校名は、ブランド創業当初からの理念で、ラテン語で“クラフトとクリエイティビティ”を意味する「Labor et Ingenium」に由来する。
「アカデミア」はイタリア・ヴェネト州モンテベッロ・ヴィンチェンティーノのアトリエと、ポヴォラノ・ドゥエヴィッレにある生産拠点に新設される専用スペースの間に位置。ブランドの伝統的な“ボッテガ(工房)”をベースに、多くの職人が技術を磨き、次世代へ継承する。
「アカデミア」では、従業員や新入社員に対してスキルの向上から学び直しまでのカリキュラムを提供するほか、外部からの受講生も参加可能で、研修活動やワークショップ、コースを通じて熟練の職人から学ぶことができる。また、地域の外部パートナーとの研修協力も行う。柱となるのは、年間50人の学生を対象にしたトレーニングプログラムで、5人の熟練した職人が指導する。コース修了後はブランドでの雇用が保証されている。
レオ・ロンゴネ(Leo Rongone)最高経営責任者は、「『アカデミア』は、『ボッテガ・ヴェネタ』独自のサヴォアフェールを維持するためのカギとなる戦略の柱になる。優れた技術と創造性は、私たちのブランドそしてヴェネト州のヘリテージにとって欠かせない。今後『アカデミア』を通して、ブランドの中核となるチームの精神をレベルアップし、スキルの継承と革新性を尊ぶ歴史を土台にしながら、未来の職人を育成する」と語った。
外部との協業の第一弾として、ベネチア建築大学(IUAV)とパートナーシップを組み、10月16日から7週にわたる特別なマスタークラスを実施している。「アルチザン養成課程:バッグデザイン&プロダクト・デベロップメント・トレーニングコース」では、IUAVが選抜した8人の受講生を対象に、対面およびオンラインでの講義やアトリエでの学習などのプログラムを提供する。また、このクラスは、ブランドの誇る熟練職人の一人、ルッジェーロ・ネグレット(Ruggero Negretto)が担当し、さまざまなシルエットや仕上げで完成されたバッグの試作や製作を通して、ラグジュアリーセクターにおける洞察力、プロフェッショナルなコミュニケーション能力なども養う。
ブランドでの経験が最も長いスタッフの1人で、アカデミアでの熟練職人のコミュニティーにも加わるネグレットは、4月に公開されたアイコンバッグのクラフト技術の歴史と今を映し出した映画「クラフト・イン・モーション(Craft in Motion)」でナレーターを務めた。「私も若手のとき、経験豊富な職人から専門知識やパッション、スピリットなど多くのことを学んだ。コミュニティーや創造性、ヘリテージ全てを通して、これらの学びを新たな世代に継承することは大きな名誉だ」と話す。
「ボッテガ・ヴェネタ」の他に、イタリアブランドによる職人育成の学校が国内で増えている。持続可能なマイクロエコノミーを開発する障害者向けのプロジェクト「ボッテガ・デイ・メスティエリ(Bottega dei Mestieri)」を行っているトッズ・グループ(TOD’S GROUP)をはじめ、「フェンディ(FENDI)」や「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」のクラフトのための学校などがある。
プラダ グループ(PRADA GROUP)が2000年代初めに設立した「プラダ グループ アカデミー(Prada Group Academy)」では、今後1年間でレザーグッズやフットウエア、プレタポルテのそれぞれの分野において200人以上を育成する予定だ。また同社は、フィレンツェ近郊のスカンディッチ工場に、レザーのクラフツマンシップに特化した同アカデミーの常設分校を設立。最初のプログラムには約30人の学生が参加する。