
2024年春夏シーズンのファッションのトレンドとして浮上したのは、上質で控えめを意味する“クワイエット・ラグジュアリー”。新クリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)による新生「グッチ(GUCCI)」をはじめ、「エルメス(HERMES)」などは差し色としてレッドを選んだコレクションを発表した。ミラノではセンシュアルな赤リップの人気も健在だ。着る人の魅力を引き立てるような装いに応じて、メイクは素肌の色や個々の唇の形を生かしつつ、目元やリップにワンポイントのアクセントを加えた。ここでは“クワイエット・ラグジュアリー”に合わせた4つのトレンドを紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月30日号からの抜粋です)
Bold Lips
大胆なリップ
赤リップをぼかして
センシュアルに
官能性を象徴する大胆なリップが引き続きランウエイの主役となった。メイクアップ・アーティストのパット・マクグラス(Pat McGrath)は「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」で、赤リップを用いて“モダン・グラマー”を表現。自身のブランドのリップスティックから2色を選び、クラシカルレッドを全体に、その中央にオレンジ系の赤を指でプレスして立体感を演出した。「クロエ(CHLOE)」のメイクアップ・アーティストのファラ・ホミディ(Fara Homidi)は、ブラシでふわっとぼかして花びらのような仕上がりに。「リップを中央から外側になじませ、外側はブラシに残っているものだけを使うこと」とコツを語り、シリアスになりがちな伝統的な赤リップを楽観的で明るい印象にアップデートした。
Glossy Finish
グロッシーフィニッシュ
唇にもまぶたにも
鮮やかでシンプルな艶を
ミラノではナチュラルな装いを格上げするため、グロスで艶を与えたメイクが多く見られた。「グッチ ビューティ(GUCCI BEAUTY)」グローバル・カラー&メイクアップ・アーティストのトーマス・デ・クルイヴァー(Thomas de Kluyver)は「シンプルでエフォートレス、そして控えめなエレガンスを目指した」と話し、「グッチ・ロッソ・アンコーラ」という名の、サバトが選んだ赤い口紅を使用した。マルチグロスを上に重ねて艶を加え、パテントレザーの質感を再現。「プラダ(PRADA)」では、「プラダ ビューティ(PRADA BEAUTY)」のグローバル・クリエイティブ・メイクアップアーティスト、リンジー・アレクサンダー(Lynsey Alexander)が8月にローンチしたばかりの同ブランドのアイテムを披露。レンガ色やタンジェリンのアイシャドウにセラムを重ね、グロッシーな目元に仕上げた。
Dramatic Eyes
ドラマティックなアイメイク
フェザーやグラデーション
静かに強調するまなざし
「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」には目の外側に羽根のアイライナーを貼り付けたモデルが登場した。メイクアップ・アーティストのルーシー・ブリッジ(Lucy Bridge)は、洋服の色調に合わせてさまざまな色の羽根を使用し、自然かつインパクトのあるディテールを作った。こめかみからこめかみまでを青い波のように彩った「ピエール カルダン(PIERRE CARDIN)」のアイメイクも目を引いた。メイクチームはこのアイデアを「地平線と海面の統合」と言い、スポンジとブラシを使って青のグラデーションを実現した。目元は大胆に、唇はグロスをのせる程度に。グラフィカルなアイメイクを施したブランドは、口元の色味を抑え、バランスをとる傾向が見られた。
Full Blush
頰いっぱいのチーク
ふんわりと広げた
チークでヘルシーに
「シャネル(CHANEL)」や「ミュウミュウ(MIU MIU)」、「コペルニ(COPERNI)」では広範囲のチークで頰を染めたモデルがランウエイを歩いた。「コペルニ」はテーマに“フレンチ・ステュディオス(フランスの勉強熱心な子)”を掲げた。メイクを手掛けたファラ・ホミディは、「ルージュを頰にのせてなじませて、同じ色を唇にも塗って、家を出発!」と、キャラクター像を膨らませナチュラルなヌードカラーを使用した。「レオナール(LEONARD)」のメイクアップ・アーティスト、ティジアナ・レイモンド(Tiziana Raimondo)は「ルックのムードは晴れやかで、でも日焼けはしすぎない。南仏のパリジェンヌのようでいて、バッドガールのようなずる賢さもあるような子」をイメージし、健康的な肌に、チークでイノセントな魅力を与えた。