ファッション

ランニングブームはいつまで続くか?

 2007年に始まった「東京マラソン」に端を発するランニング人気は、失速することなく、現在も関連市場は右肩上がりの成長を続けている。日本のランニング人口は過去4年で33%も増加し、1000万人を突破。20年の東京五輪の開催決定も追い風になることが予想される。この勢いを持続させるべくスポーツ各社は、シューズやウエアの開発はもちろん、走る機会を与える環境作りへの投資を強めている。

 「どこまで伸びるのか。天井知らずのような状況は、これまで経験がない」と語るのは、ランニングシューズ最大手、アシックスの栗林利光ランニングチームマネージャーである。2007年の東京マラソン以降、同社のランニング事業は右肩上がりが続く。オフィシャルパートナー契約を結ぶ同大会を通じての露出効果も大きい。東京マラソンの出場者のランニングシューズ着用シェアは常に5割前後を維持し、その他の大会でもトップシェアが定位置になった。同社にとって好材料なのが6、7年前に走り始めたエントリーユーザーが経験を重ねて中・上級者に成長していることだ。昔から中・上級者向けのシューズを得意とする「アシックス」にとってこの層が厚くなることはシェアアップに直結する。「トップランナーとエントリーランナーの二極を重点的に強化することが、我が社の基本戦略。ランナーの上達の道筋を、常に『アシックス』がサポートするようにする」と栗林マネージャーは意気込む。

 ランニング人口が増えている要因は、一つには東京マラソンの成功に触発されて、各自治体が地域振興策として市民マラソン大会を相次いで設立し、一般の人がレースに出ることを楽しみ始めたからだ。13年も大会数は前年比2ケタ増えたと言われているが、それでも東京や大阪、京都など大都市の大会に応募者が殺到し、出場するにも激しい競争率になっている。もう一つがITの発達である。大きく貢献したのは、ナイキとアップルが共同開発して06年に発売したスポーツキット「ナイキ+(プラス)」だ。走行データを記録できる機器は、スマートフォンやSNSの普及と合わさって、瞬く間にランナーの必需品になった。1人ではなかなか長く続かない毎日のトレーニングも、走行データをSNS上に公開したりすることで、大勢の人とのコミュニケーションが生まれ、新しいモチベーションになった。

 アディダスジャパンの和田竜路ランニング部門責任者は「ランニングを流行で終わらせることなく、文化に高めるのがスポーツメーカーの役割だ」と話す。「ランニング人口で最も裾野が広いのは、たまに走っているけれど、大会に出るほどはのめり込んでいない人たち。彼らがランニングから離れることなく、もっと楽しく快適に走り続けてもらえるかがカギになる」。同社はネットと接続してトレーニング管理ができるスポーツキット「マイコーチ」の利用者の拡大に本腰を入れる。コーチング機能など使い勝手の強化でランナーを囲い込む。ネットとつながる「マイコーチ」を空中戦に例えるなら、地上戦と呼べそうなのがイベントなどの草の根活動だ。皇居の近くに立地する直営のランニングステーション「アディダスランベース」はその一つの拠点だ。約250基もの貸しロッカーはもちろん、貸しウエアや貸しシューズは最新商品を揃えて、その機能性を体感してもらう。人気コーチによるランニングクリニックも定期的に開催する。「まずはランナーのための環境作り。売り上げは後からついてくる」と和田氏は語る。

 ニューバランスジャパンは、ユニークなランニング大会を協賛する。3月と4月に千葉県と神奈川県で開催された「カラーラン」だ。ランナーたちは5kmの距離を、カラーパウダーを浴びながら走る。ゴールする頃には全身がカラフルに染まる。欧州でトマトを投げ合うお祭りがあるが、それと同じようなハイテンションでランナーたちは大いに盛り上がる。走るのが苦手な人でも楽しめるのがポイント。ニューバランスジャパンは7月にも夜に光るグッズを身につけて走る「エレクトリックラン」を協賛した。同社は「新しいランニングの楽しみ方を提案したい。これを機に走るのを好きになってもらえれば」と言う。

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 欧米に比べて人口当たりのランナーは少ないといわれる日本。スポーツ各社による走る機会を作る試みで、まだまだ新規参加者は増えていきそうだ。

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