「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、TikTok、そしてThreadsをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。62回目は、10月からのステマ規制強化に伴うインフルエンサーの動向に関するお話。
ソーシャルエディター浅野:ステマ規制法が施行されて1カ月ほど経ちました。
「WWDJAPAN」でもステマ規制を学ぶ連載がスタートしましたが、具体的な事例がセーフか?アウトかを判断するには、専門的な知識や理解がないと難しい印象です。こうした混乱はインフルエンサーの間にも広がっており、ギフティングやPR目的の投稿依頼が多いビューティ系のインフルエンサーの中には、彼ら自身が今後どういったスタンスで商品紹介やギフティングに対応するのかを表明する投稿が増えました。とくに判断が難しい提供品に関しては「全てに対してタイアップや広告であることを明記」、PRに関しても「依頼内容が明確な企業とのみ請け負う」など、きちんと向き合っている印象です。企業側からは、今後規制がさらに厳しくなることを予想して、今の段階から厳格なルールで運用するという声を聞きました。以前もお話ししましたが、「#pr」表記はきちんと対応している企業&インフルエンサーの証になり、このハッシュタグへの悪いイメージはさらに減っていきそうですね。
村上:規制の全容を理解するのは、正直簡単ではありませんよね。インフルエンサーを活用する場合に企業が留意すべきは、「第三者の自主的な意志による投稿とは認められない関係性」が存在するか、否か?この場合の「関係性がある」とは、投稿の依頼はもちろん、宣伝や販促目的で商品を提供したり、投稿内容を指示したり、提供した商品以外のメリットやデメリットを匂わせたり(例えば、「ギフティングした商品をSNSにアップしてくれたら、次の新商品も贈る」と約束するなど)が該当します。
つまり、今回の案件以前になんらかの関係性が存在した場合は、だいたいグレーなんです。たとえ今回は対価が発生しなくても、以前金銭や商品のやり取りが発生していた場合、インフルエンサーは「以前お世話になったから」とか「また案件がもらえるなら」って意識が働くでしょう。その時点で、「第三者の自主的な意志による投稿とは認められない関係性」と判断される可能性が高いんです。
もちろん罰せられるのは企業やブランドですが、ステマの片棒を担いだとみなされてしまったら、インフルエンサーのダメージは相当でしょう。仮に彼女たちの意見を信じて商品を購入した消費者が多い場合、ステマは「間違えた買い物をしちゃった」という金銭的ダメージと、「信じていた人に裏切られた」という心理的ダメージをダブルで被りますからね。インフルエンサーが慎重になるのは、頷けます。
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