毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月30日号からの抜粋です)
小田島:生成AIが話題になっていますが、私自身は昨年末に「ChatGPT」をいじってみたのがファーストコンタクトでした。6月19日に発行した「WWDJAPAN」のファッションロー特集で、アーティストの草野絵美さんに生成AIを使って表紙のビジュアルを制作いただいて、いっそう興味がわきました。生成AIで特集ができないかな、ファッションやビューティ業界では生成AIがどんな風に使われているんだろうと8月ごろからリサーチを開始しましたが、事例はなかなか見つからず苦労しました。最終的に、今回はサイバーエージェント、メルカリ、豊島、伊藤忠商事に取材しています。先行企業がどう使っているのかが、他社にとってもヒントになればいいなと思います。
平川:私も、ファッションロー特集の表紙制作で初めて生成AIというものに触れて感動しました。全社員にAIが開放されていて、リサーチや資料作りなどに自由に使える企業もありますよね。
小田島:裏でどう使っているかは取材しないと表には出てこない情報なので、今回は伊藤忠商事にそこをしっかり聞いてきました。そうした企業では生成AIに情報を入力しても社内だけで完結するようになっており、機密が外には漏れませんが、通常の「ChatGPT」に社内情報を打ち込めば流出するリスクがないわけではありません。AIは非常に便利なツールなので使わないと損ですが、そういったリスクも念頭に置く必要があります。
平川:今特集では、福岡真之介弁護士に法律的な注意点を聞きました。画像生成などはAIを使えば人に依頼するよりコストも安く、簡単に何通りもの案が出せます。しかし、情報源のソースはブラックボックスなので、著作権侵害のリスクが高まるわけです。でもAIで導き出したものを社内資料だけに使うというなら、リスクは低く、コストも安い。リスクと便利さとでどうバランスを取っていくかが重要です。
小田島:画像生成に関しては、今は権利関係をクリアしたソースだけを使うものも出てきていますね。昔は技術を持った専門家しか使えなかったAIが、今やわれわれが普段使っている自然言語で操れる生成AIの登場で、急速に身近になりました。これをいかに使いこなすかが、今後は企業の業績や競争力に直結していくと思います。