ワールドは2023年4〜9月期、本業のもうけであるコア営業利益が前年同期比41%増の57億円だった。コロナ前の19年4〜9月期(70億円)には届かないものの、期初計画を5%上回っての着地。好調業績をけん引するのは本丸のブランド(アパレル)事業だ。
コロナ禍中に実施した構造改革の効果が如実に表れ、ブランド事業のセグメント営業利益は同32%増となる38億円を稼いだ。通期では、単一セグメントで過去最高益となる115億円を射程に入れる。下期(決算期変更に伴い10月〜24年2月)は経費コントロール改善などで足元の収益性を盤石にしながら、持続的成長を視野に「高価格帯」「OMO」「若年層向け」の3軸で新ブランド・業態の開発を進める。
3つの新基軸は、いずれも同社のポートフォリオにおいて手薄だった領域を補う。その一つである「高価格帯」は、富裕層の日常着のポジションを狙う。今秋からスタートした基幹ブランド「アンタイトル」の高価格帯ライン“カプセルコレクション”は、9月には全国の主要百貨店でポップアップストアを複数回実施し、一定の手応えを得た。「出店オファーを多数いただいており、(成長余地を)見極めながら下期以降に出店していきたい」と鈴木信輝社長。同社としては最高価格帯のブランド「シクラス」も、伊勢丹新宿本店の富裕層をターゲットとした新たな売り場「コンテンポラリー」(9月20日〜)に店を出した。
商品力強化へ事業子会社を再編
「若年層向け」としては、20〜30代向けブランド「ギャレスト」と「コードエー」が今春スタートし、しばらくはECを主戦場とする。店舗にない商品をEC経由で取り寄せて試着できる「OMO型」の新業態「アンタイトル ギャラリー」も下期から出店を開始する。いずれの新規事業も、一気に店舗網を広げる従来型のブランド開発手法をとらず、ポップアップストアやECでテスト的に成長性を見極めながら事業展開を進める。「低コストかつ、成功確度の高い方法を取っていく」。
商品力強化を念頭に置いた組織再編も視野に入れる。ワールドグループは「アンタイトル」「インディヴィ」などをフィールズインターナショナル、「タケオキクチ」などをエクスプローラーズトーキョーが運営する事業子会社制をとるが、これらの体制を見直すことで企画・生産機能を最適化する。また同様の意図で、ブランド事業子会社をまとめる中間持ち株会社の設立も検討する。