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連載 小島健輔リポート

三陽商会の復活は本物か【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。売上高の半分を稼いでいた「バーバリー」のライセンス事業を2015年6月に失って以来、赤字に苦しんできた三陽商会は23年2月期に7年ぶりの黒字に転換。今期も業績予想を上方修正した。過去と現在の数値を比較し、構造改革の成果と課題を論じてみた。

ロスト・バーバリーにコロナ禍が重なって6期連続の営業赤字に沈んでいた三陽商会も2023年2月期はようやく浮上し、コロナが明けて百貨店に客足が戻った24年2月期中間期は回復に勢いが付いて通期決算を上方修正し、株価も急回復している。復活は「本物」と言って良いのだろうか。

今中間期業績と24年2月期見通しから回復度を検証する

今24年2月期中間期(23年3〜8月)の売上高は281億5500万円と前中間期から10.6%増加したが、インバウンド売上高13億円を除けば5.5%増にとどまり、平均12%の単価アップで売上数量は1.3%減少しているから、客数はほとんど回復していない。売上高はコロナ前19年3〜8月売上高を新会計基準に換算した351億3000万円と比べれば80.1%にとどまるが、同じく前中間期から売上高を10.0%伸ばしたオンワードホールディングスとてコロナ前20年2月期中間期(19年3〜8月)の76.3%にとどまるから、コロナ禍からの売上高の回復は大手アパレルの平均的水準ではないか。

三陽商会は23年2月期第1四半期から新会計基準に移行しており、5億円上方修正された24年2月期通期の売上高見通し615億円(前期比5.5%増)は、コロナ前20年2月期の12カ月間(14カ月変則決算の19年3〜20年2月)売上高を新会計基準に換算した757億5000万円に対しては81.2%になるから、回復ペースは中間期と大差ない。さかのぼってロスト・バーバリー前14年12月期の1109億9600万円に対しては55.4%、同新会計基準換算推計売上高1464億3000万円(同期の開示「前売り」売上高1428億3000万円+卸売上高他)に対しては42.0%と遠く届かない。14年12月期の新会計基準換算の売上高は同期の百貨店売上高比率77.4%、推計手数料率28.8%として私が計算したもので、多少の誤差があるかも知れない(「前売り」とは小売りを指す)。

旧会計基準と新会計基準の大きな違いは、消化仕入れの百貨店売上高が旧基準では卸売上高だったのに対して新基準では小売売上高になり、販売手数料分(百貨店の歩率)が売上高と粗利益、販管費に上乗せされるが、営業利益以降は変わらない。百貨店売上比率にもよるが、百貨店売上比率が新基準で65.8%、手数料率が推計31.7%と見た 23年2月期だと旧基準より売上高で26.4%、粗利益率で10ポイント強程度、上乗せされる。粗利益率が18年12月期の48.4%から23年2月期は62.0%、販管費率も同52.1%から58.1%に跳ね上がっているのは会計基準変更のマジックによる部分が大きい。ちなみに20年2月期の新会計基準粗利益率は59.2%と開示されているから、23年2月期は2.8ポイント上昇したことになる。

今中間期の営業利益は7億1800万円と前中間期の3億1700万円の赤字から10億3500万円上向いて黒字転換し、コロナ前20年2月期中間期の8億6300万円の赤字からは15億8100万円改善された。中間期純利益も7億4400万円と前中間期の2億5500万円の赤字から9億9900万円上向いて黒字転換し、20年2月期中間期の6億600万円の赤字からは13億5000万円改善された。

4億円上方修正された24年2月期通期営業利益見通し31億円は前期から38.7%増え、20年2月期の28億7500万円の赤字からは59億7500万円も改善されるが、ロスト・バーバリー前の14年12月期の102億1300万円に対しては30.4%とほど遠い。3億円上方修正された純利益28億円は前期から9億円増え、20年2月期の26億8500万円の赤字からは54億8500万円も改善されるが、14年12月期の63億1800万円に対しては44.3%にとどまる。25.53円上方修正された24年2月期の一株当たり純利益見通し240円は前期から34.3%増え、20年2月期のマイナス219.17円からは459.17円も改善されるが、14年12月期の502.56円に対しては47.8%にとどまる。

コロナ禍からの回復はようやく8合目、ロスト・バーバリーからの回復はまだ4合目というのが現実だが、大江体制になってからの回復は目覚ましく、株価も22年3月7日の安値583円を底に回復に転じている。

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