PROFILE: ブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット(右)イヴァン・ペリコリ(左) / 「アスティエ・ド・ヴィラット」創業者、節子・クロソフスカ・ド・ローラ(中央)
伊勢丹新宿本店本館2階ザ ステージで開催している「アスティエ・ド・ヴィラットのクリスマス市」のオープニングのために、「アスティエ・ド・ヴィラット(ASTIER DE VILLATTE以下、アスティエ)のイヴァン・ペリコリ(Ivan Pericoli)とブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット(Benoit Astier de Villate)、スイス人画家バルテュスの妻の節子・クロソフスカ・ド・ローラ(Setsuo Klossowska de Rola)伯爵夫人(以下、節子夫人)が来日した。昨年に続き、今年もクリスマスオーナメントをはじめ、陶器や照明、香水などをそろえ、ギャラリーでは節子夫人による絵画や陶芸品を展示販売している。来日した3人にクリエイションについて話を聞いた。
「アスティエ」の2人との出会いは織物の中の金糸
WWD :「アスティエ」と節子夫人のコラボレーションはお互いにとって、どのようなものか?
ブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット(以下、ブノワ):節子夫人とは、2014年からずっと一緒にコラボレーションしている。私たちのアトリエの中に彼女のアトリエがある。今回の展示では、彼女のパリのアトリエを再現したと同時に、「アスティエ」とのコラボレーションのネコの陶器のポットを紹介している。
節子夫人:人の運命とは、出会いという名の糸で織られた織物のようなもの。芸術を勉強し、もの作りの感性がある2人との出会いは、織物の中の金糸といってもいい。2人は寛大で、絵、彫刻など自由に制作できる。今回展示している絵画でパレットを使用したものがある。パレットという画材にでき上がった絵を載せるという行為はメタモルフォーゼで、パレットに新しい使命を与えたというように考える。
WWD:節子夫人はどのようなアーティストだと思うか?
イヴァン・ペリコリ(以下、イヴァン):才能豊かなアーティスト。自由で、芸術の深さを絵画などでなく文章でも表現できる人だ。ユーモアもあり、いろいろなことを分かち合う大切さも知っている。
ブノワ:学校で教えられる伝統的な芸術も大切にしながら、自由な発想でクリエイションできるのが素晴らしい。
バルテュスとの生活はキャンバスに描かれた絵画のよう
WWD:今回の作品で表現したかったことは?
節子夫人:私は土や木などの材質に触れることに興味がある。彫刻では、素材に陰影をつけながら立体感を出し、根から空に向かって伸びていく植物の美しさを表現したかった。日本の神道では、いろいろなものに魂があるという考えがある。木にしめ縄をかけ、神聖なものとして祀られることもある。私の作品にもそのように魂が宿ってほしいと祈りを込めて制作した。絵画を描いてみたいとバルテュスに言ったときに、油絵はだめだと言われた。自分の土台である日本を大切にし、その透き通った感覚を生かすようにと言われ、水彩かグアッシュ、墨で描くようにしている。音楽では、音のあるときと音がない静寂さの両方が大切。絵画も同様に、描くものとそのものがない背景、両方の美しさが大切だ。
WWD:インスピレーション源は?
節子夫人:どこから来るかわからない。待っても来るものではないし、突然、これがしたいと思うだけ。インスピレーションがどのように湧くのか科学者に聞いてみてもいいかもしれない。科学が解明できないこともあるだろうけど。私にとっては、制作している時間が喜びだ。
WWD:クリエイションに関してバルテュスから影響を受けたことは?
節子夫人:全て。バルテュスとの生活は、見えないキャンバスに描かれた絵のようなもの。彼が亡くなったとき、私はキャンバスから出て一人で歩き始めた。
WWD:今後チャレンジしたいことは?
イヴァン:われわれの活動は、植物を育てているようなもので、それに実を実らせることが大事。展示のための作品ではなく、ギャラリーを充実させていきたい。
ブノワ:「アスティエ」は、アーティストたちとつくる一つの世界。オブジェもあれば、日用品、ギャラリー、カフェなどさまざまなものがあり、これらを通して世界を豊かにしていきたい。
節子夫人:ずっと冒険が好きなので、これから、どんなところに行くのか楽しみだ。